【相続問題】後妻の連れ子は相続できる?連れ子が相続できる2つの方法
2022/11/1
突然、相続が発生すると「後妻の連れ子は、どれくらい相続できるでしょうか?」との質問がありますが、生前に特別な対策を取らなければ、基本的に後妻の連れ子には相続権がありません。
けれども被相続人(故人)が生前に相続対策を取っていれば、後妻の連れ子であっても、遺産を受け取る可能性はあるでしょう。
今回は、後妻の連れ子が相続できる2つの方法を、詳しくお伝えします。
後妻の連れ子には相続権がない?
●後妻の連れ子は、基本的に相続権がありません
法的には例え被相続人(故人)が、後妻の連れ子との関係が深く、実の親子のように生活していたとしても、後妻連れ子に財産を相続できる権利はないのが現状です。
では、後妻の連れ子に財産を引き継がせるにはどのような手段があるのかを次に解説します。
後妻の連れ子が相続する2つの方法
●後妻の連れ子が相続するには、主に養子縁組と遺言を残す方法があります
ただし後妻の連れ子が「相続権」を得る方法は養子縁組だけです。
そのため、後妻の連れ子以外に複数の相続人がいたとして、より確実に相続ができる方法は、養子縁組になるでしょう。
①後妻の連れ子と養子縁組
②遺言を作成する
この他には被相続人(故人)が生前に後妻の連れ子に対して、自分の財産を贈与する方法がありますが、この場合には贈与税が発生します。
後妻の連れ子が相続した時にも「相続税」は発生しますが、贈与税は相続税と比べて高額になるため、結果的に上記2つのいずれかの対策を取るケースが多いでしょう。
ただし一般的な親子関係の場合、生前贈与の目的によって相続税対策になることがありますので、この点は別の生前対策として検討してください。
・沖縄に多い生前贈与3つの種類☆相続税対策に効果的な非課税枠と注意点
①後妻の連れ子と養子縁組
●養子縁組をすることで、後妻の連れ子は子どもとして相続権を得ます
法的に養子として入籍をしてしまえば、血縁関係のある実子と同じ扱いで、後妻の連れ子でも相続権を得ることが可能です。
被相続人(故人)の配偶者である後妻が健在だとして、連れ子が相続対策で養子縁組をした場合、他に相続人がいないのであれば、後妻が遺産の1/2を、残りの遺産1/2を連れ子が相続することになるでしょう。
では、後妻の連れ子1人が相続対策で養子縁組をした場合、前妻に血縁関係のある実子がいた場合、遺産の分配はどのようになるでしょうか。
●法廷相続人が、配偶者(後妻)・養子(後妻の連れ子)1人・実子(前妻との子ども)1人だった場合の遺産の分配
・配偶者(後妻)…遺産の1/2
・養子(後妻の連れ子)…遺産の1/4
・実子(前妻との子ども)…遺産の1/4
…となり、配偶者は常に遺産の1/2を相続し、残りの遺産を法的な子ども達で均等に分配する方法が、法的な遺留分による分配方法です。
●つまり後妻の連れ子であっても、法的に子どもとして籍に入ってさえいれば、実子と同等の相続権を得られます。
「遺留分」とは
●遺留分とは、法的に定められた法定相続人が、最低限の遺産を相続できる権利です
ただし「最低限の遺産を相続できる権利」なので、必ず遺留分に沿った遺産分配をしなければならない訳ではありません。
●例えば、相続人が遺留分を遺言の指示などにより、遺留分を侵害されて納得できない場合、この権利により、遺留分を正当に相続するための「遺留分減殺請求」裁判を起こすことができます。
…ですから相続人本人が納得して、遺産分配の内容を示す「遺産分割協議書」に署名と捺印をしたならば、遺留分の通りに遺産分配が行われなくても良い訳です。
●遺留分は、あくまでもガイドラインと捉えると良いでしょう
そのため例えば、母親の老後資金を確保するため、子どもが遺留分を放棄して遺産分割協議に署名・捺印を行い、遺産の100%を母親が相続するケースも多々あります。
・【沖縄の実家相続】遺言書で遺留分を侵害したら無効?生前にできる対策
②遺言を作成する
●遺言で指示する「遺贈」により、後妻の連れ子へ遺産を譲る方法です
遺言により法廷相続人ではない人物(ここでは後妻の連れ子)へ、相続遺産の一部を譲ることを「遺贈(いぞう)」と言います。
「〇〇の財産は〇〇に遺贈させる」と一筆を記録してください。
付言事項などで、他の相続人などへ理由など、一筆添えると尚、良いでしょう。
ただし遺贈にはいくつかの問題点があります。
[1]遺留分減殺請求の可能性
[2]不動産遺産の登記手続きの遅延
[3]遺言が無効になる
遺贈の場合、相続の権利を持たない人物へ遺産の一部を譲る対策であり、法廷相続人としての権利を得る訳ではありません。
●遺贈により遺産を譲られた場合、立場としては「受遺者(じゅいしゃ)」です
この点で他の法廷相続人に不満が出た場合、後妻の連れ子は相続トラブルに巻き込まれる可能性があるでしょう。
[1]遺留分減殺請求の可能性
●遺贈により法定相続人の遺留分を侵害した場合、遺留分減殺請求を受ける可能性があります
例えば被相続人(故人)に前妻との子ども1人いたとして、死亡時に配偶者である後妻と連れ子1人の3人で暮らしていた場合に、下記のような内容の遺言を残したとします。
この遺言の通りであれば、前妻との子どもに遺産は残りません。
けれども前妻との子どもは血縁関係のある実子ですから、遺留分として遺産の1/2を相続する権利があります。
●この場合、実子である前妻との子どもは、不服として遺留分減殺請求の裁判を起こす可能性があるでしょう。
[2]不動産遺産の登記手続きの遅延
●不動産の遺贈を受けた場合、相続登記では他の相続人の協力が必要です
例えば、実家を後妻の連れ子が遺贈により相続した場合には、名義人を変更する「相続登記」の手続きが必要になります。
この時、法廷相続人として相続登記を進める場合と、遺贈を受けた場合とでは、大きな違いがあるので注意をしてください。
・相続人の相続登記
…相続人はひとりで相続登記(名義人の変更)手続きが可能
・受遺者の相続登記
…他の法廷相続人の協力と同意を得て、手続きを進める
そのため相続人として不動産を相続した場合は、他の相続人との関係性が良好でなくとも、単独で名義変更ができますが、受贈者として遺産を譲り受けた場合は、他の相続人に協力してもらわなければなりません。
●他の相続人との関係性が良好ではない場合、時間が掛かってしまうでしょう。
・相続による名義変更は絶対必要!必要書類や費用、手続き5つの手順
[3]遺言が無効になる
●遺言が法的に適切に残されていない限り、遺言書として無効になる可能性があります
遺言にはいくつかの種類がありますが(後述します)、特に自筆証書遺言で起きやすいトラブルです。
・遺言書が見つからなかった
・家庭裁判所の検認で無効になった
自筆証書遺言は思い立った時に作成できて、気軽に何度でも書き直せる点が魅力ですが、その分、いざ相続が発生した時に無効になる可能性も高くなります。
特に自筆証書遺言を作成後、自分で引き出しなどに保管していた場合、そもそも遺言書自体が発見されない可能性もあるでしょう。
今では公証役場で自筆証書遺言の保管も受け付けていますので、こちらも検討してみてはいかがでしょうか。
確実な遺言は公正証書遺言
●遺言を確実に有効にしたい場合、公正証書遺言がおすすめです
公正証書遺言は被相続人が生前に公証役場に赴き、公証人に遺言書を作成してもらう遺言書です。
専門的な公証人に遺言書を作成してもらうため、文書に間違いの心配はありません。
・公証役場で作成する
・公証人に作成してもらう
・証人が2人同席する
・公証役場で保管してもらう
・家庭裁判所の検認が必要ない
…以上の点で信頼性が高く、より確実な遺言を作成できるでしょう。
けれども遺言書として有効であると認められてはいるものの、遺言の執行自体は別物です。
遺言内容が特定の法廷相続人の遺留分を著しく侵害しているなどの場合、その法廷相続人は遺留分減殺請求を起こす権利は依然あります。
・【沖縄の実家相続】遺言書で安心できる種類は?状況で選ぶ3種の方法
死亡保険の受取人にする
●後妻の連れ子を、死亡保険の受取人にする方法もあります
本来であれば後妻の連れ子に遺産を残したい場合、養子縁組が最も確実な方法ですが、何らかの事情で養子縁組ができない場合、死亡保険の受取人に後妻の連れ子を指定する方法も一案です。
法廷相続人としての権利はないものの、一定の財産を享受できるうえ、メリットもあります。
・死亡保険の受け取りであり、相続ではない
・相続税が掛からない
つまり、遺産相続と死亡保険の受け取りは別物なので、感情的な摩擦はあっても、法的な相続トラブルに巻き込まれる心配はありません。
また死亡保険を受け取った場合、これは受取人の財産として換算されるため、相続税が掛からない点もメリットです。
●被相続人(故人)が、財産の一部を死亡保険に掛けて、相応の死亡保険を準備することで、遺産の一部を後妻の連れ子に譲る対策ができます。
最後に
以上が後妻の連れ子が遺産を相続できる2つの方法です。
確かに相続トラブルが最も多く、またこじれやすいケースが、被相続人(故人)が再婚していた場合でしょう。
再婚による相続トラブルでは、この他にも「前妻の子どもが見つからない(連絡が付かない)」などのパターンも見受けます。
今回のように後妻の連れ子に相続をさせたい場合も同じですが、被相続人(故人)が再婚をしていた場合、生前から前妻家族と後妻家族の交流を増やして親睦を深められれば、相続発生後も協力しあい、理解し合えるため理想的です。
ただ感情的にそうもいかない時には、エンディングノートなどでそれぞれに愛情を示し、遺産分配を指示した理由を、丁寧に説明するなど、理解を得るための工夫も役立つでしょう。
・エンディングノートの役立つ書き方☆必要な7つの項目と注意点
まとめ
後妻の連れ子が遺産を受け取る3つの方法
・養子縁組をする
・遺言で指示する「遺贈」
・死亡保険の受取人になる