【沖縄の実家相続】遺言書で遺留分を侵害したら無効?生前にできる対策
2022/6/7
沖縄の相続対策では、遺留分を無視した遺言書による相続指定(遺産分割の指定)も多いです。
「遺留分」とは法律で定められた法定相続人が、最低限の遺産を受け取る金額や権利を差しますが、あくまでもガイドラインであり、相続人全員が納得するならば、それに従う必要はありません。
ただ沖縄の相続対策で気になる点は、遺言書により故人(被相続人)が、遺留分を無視した相続指定(遺産分割の指定)をした場合です。
仮に相続人が納得しなかった場合、遺言書は無効になる可能性もあります。
今回は、沖縄の相続対策に多い遺言書による相続指定で、遺留分を侵害してしまいそうな時、生前にできる対策をいくつかお伝えします。
【沖縄の実家相続】遺言書で遺留分を侵害したら無効?
生前にできる対策
「遺留分」とは
「遺留分」とは相続人が遺産を相続する権利を差し、配偶者であれば遺産の1/2など、最低限の分配が定められています。
ただ遺留分は遺産分割のガイドラインのようなもので、相続人が納得するならば、必ずしも遺留分に倣う必要はありません。
そのため沖縄の相続では遺留分を無視した、遺言書による相続指定(遺産分割の指定)が増えるのですが、この場合、相続人が遺留分請求(遺留分減殺請求)を起こした場合、無効になる可能性も少なくありません。
具体的な遺留分の割合
そのため、沖縄で相続対策に遺言書による相続指定を行うならば、遺留分を無視しない限りは有効だとも言えます。
例えば配偶者に家を残し、長男夫婦に株券などを残したいとして、遺言書で指定をした場合、それぞれ遺留分を侵害していなければ、相続人はそれに従い遺産分割を行うでしょう。
<具体的な遺留分割合>
●基本的に「遺留分」は、故人(被相続人)の財産を共に築き上げたとする親族です。
そのため、配偶者・父母・子どもに遺留分があります。
・配偶者のみ…1/2
・子どものみ…1/2
・直系のみ…1/3
・配偶者+子ども…配偶者1/4、子ども1/4
・配偶者+父母…配偶者1/3、父母1/6
勘違いされやすいのですが、父母には遺留分がありますが、故人(被相続人)の兄弟姉妹には遺留分がありません。
ですから例えば、故人(被相続人)が配偶者と兄2人を残して亡くなった場合、配偶者の遺留分は遺産の1/2、兄2人は相続人にはなりますが、遺留分はありません。
☆沖縄の相続対策で、以上の遺留分に考慮した遺言を残した場合、相続人は遺留分請求権(遺留分減殺請求権)を行使することはできないため、遺言はそのまま有効です。
生前の遺留分放棄
ただし被相続人は生前に、将来的に法定相続人になる人々「推定相続人」に対して交渉をして、推定相続人が納得した場合には、生前に遺留分放棄の手続きをしてもらうこともできます。
この場合、生前贈与などの条件で、遺留分放棄を交渉するケースが多いですが、現実的には生前の遺留分放棄による沖縄の相続対策は、あまり見受けません。
遺留分を侵害しても、遺産を残したい場合
けれども例えば、配偶者と子どもが2人、実家と僅かな預貯金財産のみだった場合など、できるだけ多くの遺産を一人の相続人に残したいケースもあるでしょう。
もちろん生前に相続人全員で話し合うのが一番ですが、何らかの事情でそれが叶わなかった場合、下記のような方法があります。
<遺留分請求権の行使を避ける対策>
(1)生前贈与
(2)養子縁組
(3)生命保険
生命保険も養子縁組も、法定相続人以外の人へ遺産を譲りたい時にも役立つ方法です。
生前贈与のみ、贈与税が掛かるため賢く非課税枠を利用した生前贈与を試みたり、遺留分対策が有効になるよう、適切なタイミングでの贈与が必要になるでしょう。
沖縄の相続対策☆生前贈与
遺留分対策のみならず、沖縄では相続税対策としても多く用いられる方法が生前贈与です。
本来、生前贈与は名前の通り相続人にとって、被相続人の遺産を生前に前倒しで得る「特別受益」に当たりますが、譲るタイミングによっては遺留分に対してのみ、特別受益が時効になります。
<生前贈与の遺留分、特別受益の時効>
☆故人(被相続人)が亡くなる10年以上前に、生前贈与を受けていた場合、遺留分に対して特別受益が時効になるため、遺留分に含まれません。
つまり2022年3月1日に被相続人が亡くなったとして、2012年3月1日以前に長男が生前贈与を500万円を受けていたとします。
相続発生時の遺産が900万円、相続人が子ども3人だった場合、生前贈与を受けていた長男も残る2人と同じ300万円の相続が可能です。
一方、生前贈与が2020年など10年よりも直近だった場合には、遺留分として計算されるため、長男は被相続人が亡くなった時点(相続発生時)での相続財産は、相殺されるでしょう。
※生前贈与による、沖縄で人気の相続対策については下記に詳しいです。
・沖縄に多い生前贈与3つの種類☆相続税対策に効果的な非課税枠と注意点
「孫に生前贈与を行う」対策
ちなみにこの生前贈与ですが、子どもには10年が時効のタイミングですが、相手が孫になると1年で時効を迎えます。
<孫への生前贈与が、特別受益と見なされる?>
☆正確には、そもそも孫には遺留分がないのですが、被相続人が生前1年以内に孫へ生前贈与を行った場合、相続人である親に対する特別受益と見なされる可能性が高いためです。
被相続人が生前1年以内に孫へ生前贈与を行っていて、これが特別受益と見なされた場合、「持ち戻し」となり、遺留分に含まれる可能性が高くなります。
沖縄の相続対策☆養子縁組
沖縄の相続対策でもしばしば見受ける遺留分対策には、養子縁組もあるでしょう。
特に沖縄では同居している長男嫁と養子縁組して、長男家族への遺留分を増やす対策が見受けられます。
<養子縁組による遺留分対策>
●例えば、被相続人の遺産が9千万円、法定相続人は子ども3人だった場合です。
<遺留分対策をしなかった場合>
・長男…3千万円
・次男…3千万円
・三男…3千万円
<長男嫁と孫1人(長男の子ども)が養子縁組した場合>
・長男(一家)…1千800万円×3人=5千400万円
・次男…1千800万円
・三男…1千800万円
養子縁組であっても実子でも、法的に相続人の遺留分に変わりはありません。
そのため、養子縁組により一家単位で多く遺産を相続できます。
ただしエンディングノートなどに理由まで説明するなど、残された兄弟が、相続後も関係性が続くことまで配慮をして、遺留分対策を取った方が良いでしょう。
同居している長男家族が、実家の評価額に相当する遺産額を相続するためであれば、他の相続人も納得できるかもしれません。
※息子夫婦の嫁を養子縁組したとして、夫婦関係に影響はありませんので、この点は安心してください。
沖縄の相続対策☆生命保険
遺産を生命保険に掛け、受取人を指定する方法でも、譲りたい人へ遺産を譲ることが可能です。
生命保険の受取人は法定相続人かどうかは関係ありませんので、法定相続人以外の人へ財産を譲りたい場合にも有効でしょう。
<生命保険による遺留分対策>
●さらに生命保険の受取人として、遺産を相続する場合のメリットは、受取人の固有財産になるため、相続税が課税されない点です。
けれども、あまりに多くの保険金を掛けることはおすすめできません。
相続発生時に遺留分対策や相続税対策を裁判所から疑われることもあります。
この場合は保険金としてではなく、相続財産として遺留分の一部と判断されることもありますので、注意をしてください。
最後に
今回は沖縄に多い遺言書による相続対策で、遺留分を侵害する遺産分割指定を行った場合、遺言は無効になるのか…、また、遺留分を越えた遺産分割指定を行いたい場合の対策を3つ、お伝えしました。
今回は遺産を特定の法定相続人へ多めに残す場合の対策をお伝えしましたが、遺産のほとんどが住んでいる家で、配偶者や同居家族が暮らす家を残したい場合もありますよね。
このようなケースでは「暮らす住居を残す」対策もできます。
例えば、家の権利を所有権と居住権に分け、住みたい相続人が居住権を受け取り、他の相続人が所有権を受け取るなどの方法もあるでしょう。
配偶者であれば「配偶者居住権」なども行使できます。
※詳しくは別記事「【沖縄の実家相続】遺言書で代償分割を指定する?家を残す3つの対策」をご参照ください。
生前にできる3つの遺留分対策とは
(1)生前贈与
・10年以上前の生前贈与は遺留分が時効になる
・孫への生前贈与なら1年以上前(2)養子縁組
・孫や嫁の養子縁組など
・養子も実子も遺留分は平等(3)生命保険
・生命保険の受取人にする
・生命保険には相続税が掛からない
・裁判所で疑われることもある