認知症と診断されたが遺言を残したい!遺言書を無効にしない方法

2022/11/7

認知症と診断されたが遺言を残したい!遺言書を無効にしない方法はある?
終活では「認知症と診断されたけれど、遺言書を残したい」との相談も多いです。

一般的に認知症になると遺言書は無効になると考えられていますが、実は認知症の診断後に書いた遺言書が効力を発揮した相続は、多くあります。


・認知症と診断されたけれど、遺言に効果はあるか?
・認知症の診断後、遺言を書くポイントは?
・どうしたら「遺言能力」があると診断される?

認知症の診断後に遺言書を書き、相続発生時に有効にしたいならば、そのポイントは「遺言能力」です。

今回は、認知症の診断後に書いた遺言書を有効にするポイントを、いくつか解説していきます。
 

 

認知症の診断後は、遺言能力がポイント

認知症の診断後は、遺言能力がポイント
●認知症の診断後に書いた遺言を無効にしないポイントは「遺言能力」です

認知症の診断を受けても、遺言書を有効にする可能性はあります。
その可能性は認知症が軽度で、遺言を残す能力が被相続人にあると証明する方法です。

この遺言を残す能力を「遺言能力」と言いますが、この遺言能力が認められる2つの要件は、年齢と、「意思能力」があるかどうかになるでしょう。
…では「意思能力」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
 

<認知症後の遺言:遺言能力>
①満15歳以上
…遺言能力として年齢的な判断は満15歳以上、高齢者の上限はありません
 
②意思能力
…「意思能力」とは、自らが行った行動の結果を理解し、意思決定をする能力です。

 
認知症により遺言の有効性に不安を覚えているケースでは、ほぼ満15歳以上ですから、ここで焦点となるポイントが、後者の②意思能力ですよね。
…では、意思能力の有無を判断する決定基準には、どのようなものがあるのでしょうか。
 

意思能力の判断基準

●意思能力の判断基準は、内容を理解した上で結果を理解し、意思を伝える能力です

認知症の診断後に遺言を書くとして、現段階で「意思能力があるかどうか」を判断したい場合には、主に下記3点を意識してチェックしてみてください。
 

<認知症後の遺言:意思能力の判断基準>
自らの意思を的確に伝えている
・その事柄に関連する情報を理解している
・意思を伝えたことによる結果を理解している

 
…この意思能力は終末期の医療方針の決定でも、「本人に判断する能力があるかどうか」の視点で求められる場面がありますが、鎮静剤の投与による事例が分かりやすいです。

鎮静剤を投与する有無を判断する意思能力が本人にあるかどうかは患者本人が…、

・鎮静剤の投与の意思表示ができる
・鎮静剤を投与する意味や影響を理解している
・鎮静剤投与の可否について、合理的な判断をしている

…などなどのポイントで患者を見て判断することがあります。

認知症と診断された後の遺言も同じことで、遺言を残す意思表示や、遺言の意味、その影響を理解して、適切な判断ができる状態であれば、認知症後の遺言でも有効になる可能性があるでしょう。
 

認知症後の遺言書を有効にするポイント

認知症後の遺言書を有効にするポイント
●認知症後の遺言書を有効にするポイントは、症状が軽度であることの証明です

認知症の診断を受けたとしても、遺言書を書く段階で、進行が軽症であったことを証明する必要があります。

それも進行具合は日々変化し曖昧なので、より確実な証明ができる方法は「数字」で表すことでしょう。
 

<認知症後の遺言:有効にするポイント>
①医療記録
看護記録や介護記録
③長谷川式認知症スケール
④遺言内容
公正証書遺言

 
…認知症の診断後に書いた遺言書を効果的に残すのであれば、上記5点を生前から意識して対策を取ると安心です。
 

①医療記録

●認知症の進行状態が、俯瞰的に理解できる記録です
 
例えば医師の診断書の他、診察記録があれば、そのなかに医師とのやりとりも細かく記載されれているケースがあり、医師の言葉を充分に理解して、意思疎通をしていた様子が読み取れる書類もあります。
 

②看護記録や介護記録

●看護記録や介護記録も、具体的で遺言書作成時の被相続人の進行状態を証明できます
 
特に看護師や介護士による記録は、日常生活を俯瞰的に記録していることが多いです。
そのため日々の暮らしぶりをイメージできる内容も多く、具体的に被相続人の認知症がどのような状態であったか、証明できるでしょう。
 

③長谷川式認知症スケール

●「長谷川式認知症スケール」は、認知症の進行具合を、簡易的に具体的な数値で表す知能検査です

30点満点で構成される長谷川式認知症スケールにおいて、10点以下が「意思能力がない」と診断されるレベルとなります。
 

<認知症後の遺言:長谷川式認知症スケール>
・30点満点…正常
20点以上…軽度(認知症の診断がある場合)
・20点以下…認知症の疑いあり(中等度)
・10点以下…意思能力がない

 
以上のように点数で判断されますが、あくまでも認知症後の遺言が有効か無効かを検討するための判断材料です。

認知症後の遺言の判断に多様ですが、なかには認知症である10点以下でも、遺言が有効になった判例があります。
 

④遺言内容

●遺言の内容がシンプルであるほど、意思能力が認められやすいです
例え長谷川式認知症スケールが10点以下であっても、その意思能力に見合ったシンプルな内容の遺言書であれば、認知症発症後の遺言でも認められる可能性があります。
 

<認知症の遺言:遺言内容>
●一例として、不動産財産預貯金財産があったとして…。
[A]全ての遺産をAさんに譲ります…シンプル
[B]預貯金財産をAさんとBさんで分割、不動産財産をCさん…複雑

 
大まかですが、このように捉えて、認知症の診断後の遺言書であれば、シンプルな内容で収まるよう、財産自体をシンプルに分けるのも良いでしょう。

意思能力の判断には、遺言内容の理解が不可欠です。
その遺言が理解しやすい内容ならば、それだけ認知症後の遺言が有効になる敷居が低くなります。
 

⑤公正証書遺言

●公正証書遺言は認知症診断後の遺言でも、より有効になる可能性が高いです

公正証書遺言は、被相続人本人が公証役場に出向き、公証役場で専門的な第三者である公証人が被相続人からヒアリングをして作成します。

また2人の証人も同席するため、遺言書を作成した時の様子が明瞭です。
 

<認知症後の遺言:公正証書遺言>
公証人が被相続人からヒアリングして作成
証人が2人、同席する
・相続発生まで公証役場で保管される
・相続発生後、家庭裁判所による検認が必要ない

 
一方、自筆証書遺言は自筆により自分で書き、自宅で保管するため、相続発生後の有効性は低くなります。(公証役場に保管してもらうことは可能)

例えば公正証書遺言は相続発生後でも、家庭裁判所による検認の必要はありませんが、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要です。
 

遺言書の種類や有効性については、下記コラムでより詳しくお伝えしています。
【沖縄の実家相続】遺言書で安心できる種類は?状況で選ぶ3種の方法

 

 

最後に

以上が認知症と診断された後に遺言を残したい場合、無効にしないポイントです。

ただもちろん、法廷相続人の誰かが遺言の無効性を訴えなければ、認知症であっても遺言がそのまま採用されます。
 

●認知症後の遺言に限らず、相続人の遺留分を侵害した分割内容は、相続人により遺留分減殺請求の訴えを受ける可能性が、より高いです。

 
また自筆証書遺言の場合、自筆の字が震えたりせず筆跡が乱れていない、遺言の文章が整然と構成されている、遺言を書いた理由なども、意思能力の判断材料になる場合もあるでしょう。
 

まとめ

認知症後に書いた遺言を、有効にするポイント

・医療記録
・看護記録や介護記録
・長谷川式認知症スケール
・遺言内容
・公正証書遺言

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