【沖縄の相続】介護が報われる寄与分とは?主張が通る7つの要件を解説
2022/12/1
沖縄の相続トラブルでは「寄与分(きよぶん)」の主張によるものも多いですよね。
「寄与分」とは、例えば介護など、生前の被相続人に貢献した人へ、相応の配分を行うことです。
・寄与分の主張は通るのか?
・寄与分が認められる5つの条件とは
・寄与分が認められなかった事例は?
今回は、沖縄の相続トラブルに多い「寄与分(きよぶん)」について、認められるための5つの条件や、相続で寄与分を主張する時に役立つ、認められなかった事例をお伝えします。
「寄与分」とは?
●「寄与分(きよぶん)」とは、相続人の中に財産を維持又は貢献した人に、その貢献度に応じて増やす相続の配分です
被相続人(故人)のために貢献した人が、遺産を多くもらえる特権とも言えます。
相続人同士で寄与分に対する配分を話し合う流れが一般的ですが、相続人全員で相続配分を決めて同意する遺産分割協議において、折り合いないままトラブルに発展することも、少なくありません。
●遺産分割協議で相続トラブルが起きた場合、家庭裁判所へ寄与分を主張します。
①調停
②裁判
まず相続人同士は寄与分について調停で話し合いの場を持ちますが、それでもまとまらない時には裁判になる流れです。
寄与分に過度な期待ができない理由
●ただ実際には相続トラブルが起きた時に、寄与分の主張を諦める人は少なくありません
これは現実的な相続トラブルの現場で、寄与分の主張が通りにくい事例が多いだけではなく、苦労して寄与分を通したとしても、得る増加分も期待するほどではないためです。
(1)寄与分が認められるには条件が多い
(2)寄与分に相当する増加分は少ない
例えば、相続で寄与分が認められると遺産分割の割合も変わると考えがちですが、実際には「純粋な」介護時間をパート代に割り当てて算出される程度です。
相続の現場では寄与分が認められる事で「金額が増える!」「介護の苦労が報われる!」と思いがちですので、金額を見てがっかりする人も少なくありません。
ただし他の相続人が納得すれば良いため、なかには1,000万円以上の寄与分を得た事例もあります。
望む金額ではない可能性を重々承知の上で、相続で寄与分を主張してみましょう。
相続で寄与分を認める7つの要件
●相続で寄与分を主張する場合、他の相続人が納得できる内容と証拠を提示しなければなりません
難しい点は、例えば介護をしていた家族が相続で寄与分を主張していた場合、これが①「純粋な」寄与行為であったかどうか、そして②寄与行為を行っていた証拠を提示して、他の相続人に納得してもらわなければならない点です。
例えば同居家族の寄与行為では、自分の食事と一緒に介護職を作っていた、お世話をしながら一緒に食事をしていたなど、寄与行為自体に対して揉める事例もあります。
(1)相続人であること
(2)被相続人にとって特別な貢献である
(3)寄与行為から対価を得ない
(4)貢献頻度は一定期間ある
(5)寄与行為が継続して行われた
(6)被相続人の財産や増加の因果関係がある
(7)納得する証拠を提示する
上記の内容でも分かるように、家族の介護では高齢の親から「ありがとう」などとお礼を定期的に貰った事例もありますが、介護に対して相応の報酬を得ていた場合、「対価を得た」として認められません。
(1)相続人であること
●相続で寄与分を主張できる人は、被相続人(故人)の配偶者や子どもです
例えば被相続人(故人)から見て他人である場合、子どもの配偶者(嫁)や友人・知人などが、被相続人(故人)の生前にかいがいしく介護をしていたとしても、相続人ではないので、寄与分の主張はできません。
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(2)被相続人にとって特別な貢献である
●民法では家族は互いに助け合う義務があるとされ、その義務を超えた寄与行為でなければなりません
血縁関係者や同居家族、配偶者として、それぞれ助け合い生活を営む義務は民法で定められているため、例えば配偶者の通院のための送迎などでは、相続で寄与分が認められない事例が多いです。
①民法730条「親族間の互助義務」
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
②民法752条「夫婦の協力扶助義務」
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
③民法877条「親族の扶養義務」
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
[民法より引用]
24時間同居をしながら介護をしていた相続人が寄与分を認められた事例では、約8時間~11時間/日の介護を毎日、介護離職をして13年間行っていた子どもの寄与分がありました。
このように通常の暮らしでの相互扶助を超えた「特別な」寄与行為でなければなりません。
(3)寄与行為から対価を得ない
●「対価」の基準は、ヘルパーなど他人が寄与行為を行っていた場合の報酬との差です
同居家族が介護を行っていた場合など、多くの事例で全くの無償行為はあまりありません。
そのため介護などの「寄与行為に相応する対価を受けたかどうか」の判断基準として、第三者が行った時の報酬を確認します。
第三者が受け取ったであろう報酬よりも、格段に低い金額を受け取っていた場合、寄与分として認められやすいです。
(4)貢献頻度は一定期間ある
●相続で寄与行為の貢献頻度・継続期間の目安は、週3日~5日以上/3年間以上の継続です
例えば「足腰が悪かった被相続人(故人)の引っ越し作業を3日間手伝った」などの場合、寄与行為の頻度も一度ですし、継続期間は3日間ですので、寄与分にはあたりません。
(6)被相続人の財産や増加の因果関係がある
●寄与行為により被相続人(故人)の財産が維持されたり、財産を増やす作用が必要です
例えば、被相続人(故人)の病気などの事情により手つかずになった事業を継続するために従事したのであれば、被相続人(故人)の財産維持や増加に繋がったと判断されるでしょう。
反対に相続で寄与分が認められなかった事例では、被相続人(故人)の事業継続に寄与したものの、事業が傾いてマイナスになったものがあります。
(7)納得する証拠を提示する
●寄与分を主張するに充分な証拠を、他の相続人に提示しなければなりません
例えば介護による寄与行為の場合、被相続人(故人)のカルテや介護日誌、被相続人(故人)の晩年に扶養行為を行っていたならば、家計簿や預貯金通帳の控えなどが証拠になります。
相続で寄与分が主張できる、それぞれの「型」によって証拠も変わってきます。
・【沖縄の相続】不公平にならない「寄与分」5つの型とは?主張には「証拠」がポイント!
最後に
以上が沖縄の相続で相談の多い「寄与分」についてですが、特に沖縄の相続では「介護や看護などによる寄与分を主張したい」との相談が多いです。
また介護や看護による寄与行為を行っていた場合、被相続人(故人)の生活費の負担や財産管理など、経済的な負担や管理も担う人も多いでしょう。
いずれも無償、もしくは格段に安い報酬で貢献していた場合、生前の被相続人(故人)への特別な寄与行為にあたる可能性があります。
生前から細かな記録や預貯金通帳の保管など、相続開始後の寄与分の主張に向けて、準備を整えておくと良いでしょう。
まとめ
相続の「寄与分」とは
●寄与分とは
・貢献度に応じて相続分を増やすこと
・期待よりも少ない事例も多い
・寄与分に時効はない
●寄与分を認める7つ要件
・相続人であること
・被相続人にとって特別な貢献である
・寄与行為から対価を得ない
・貢献頻度は一定期間ある
・寄与行為が継続して行われた
・被相続人の財産や増加の因果関係がある
・納得する証拠を提示する