特別受益の証拠集め!相手が特別受益を認めない時の対処法を解説!

2022/11/28

特別受益の証拠集め!相手が特別受益を認めない時の対処法を解説!
相続トラブルに多い「特別受益」の主張には、証拠集めが必要です。

特別受益」とは、相続発生前に一部の相続人が被相続人から財産を譲与された利益で、例えば生前贈与遺贈、死因贈与などによる特別受益を見受けます。

・特別受益を有効にしたい
・より平等に遺産を分割したい
・生前贈与を主張したのに、相手が認めない

などなどの場合、どのような特別受益の証拠が有効になるのかを、特別受益を遺産分割の際で持ち戻しする有効性とともに解説します。
 

 

特別受益の主張には、証拠が必要

特別受益の主張には、証拠が必要
●特別受益を有効にするには、証拠集めが必要不可欠です

「姉は5年前の婚姻時に、父親から持参金として3,000万円も貰っていたのに、何も生前贈与を受けていない妹の私と同じように遺産分割されるなんて、納得できない!」

このような相談があった山本さん一家の場合、姉が生前に父親から貰った3,000万円の生前贈与が「特別受益」です。
 

・姉…受益者(特別受益3,000万円)

 
このような相談は多いですが、相続発生後の遺産分割協議で姉の生前贈与の存在を主張したとして、姉が認めなければ調停や裁判で争う他ありません。
 

「特別受益」とは?

●特別受益は、相続人のうち一部のみが、被相続人から生前に受けていた利益です

山本さん一家のケースでは、姉が父親から婚姻時貰った持参金としての生前贈与、3,000万円が特別受益とされます。

相続発生後に特別受益とみなされた場合、姉の生前贈与は遺産に加算され、平等に相続人に分割される仕組みです。

例えば、山本さん一家で姉の特別受益が認められた場合、下記のような遺産分割になります。
(母はすでに他界、相続人は姉と妹の2人のみです。)
 

<特別受益の仕組み(遺留分計算)>
●父親の遺産5,000万円、姉の特別受益3,000万円(5年前)

[みなし相続財産]5,000万円+3,000万円=8,000万円
[姉の相続]4,000万円(8,000万円×1/2)-3,000万円(特別受益)=1,000万円
[妹の相続]4,000万円(8,000万円×1/2)

※姉の特別受益が認められた場合、妹は遺留分4,000万円が侵害された時、遺留分の侵害を主張できます。

 
けれども特別受益が認められない場合は、姉が生前贈与を受けた3,000万円が遺産総額に加算されないまま、遺留分計算をされるため、妹が最低限相続できる遺留分が2,500万円(5,000万円×1/2)と、1,500万円もの減額です。

この不公平を解消し、相続トラブルの種を除くために、特別受益の仕組みがあります。
 

特別受益とみなされる財産の譲渡に関しては、下記により詳しいです。
相続トラブルが多い「特別受益」とは?時効や対象となる生前贈与を解説!

 

相手が特別受益を認めない!

相手が特別受益を認めない!
●受益者が特別受益を認めない場合、特別受益を有効にするために証拠が必要です

山本さん一家の一例では、妹が姉の特別受益を主張した時に、姉がそれを認めて平等に遺産分割を行うならば、証拠を集める必要はありません。

姉が特別受益を認めないケースに限り、その相続トラブルは調停や裁判に持ち込まれます。
この時に、特別受益を立証する証拠集めが必要です。
 

特別受益の証拠一覧

特別受益の証拠集めが必要になる流れは多々ありますが、主に下記のようなケースにおいて、調停や裁判まで持ち込まれる相続トラブルを見受けます。
 

<特別受益の証拠一覧>
生前贈与を受け取っていた書類
不動産を贈与された書類
自家用車が贈与された書類
学費などの教育費を贈与した書類
生活費用の贈与を受けた書類
⑥新たな事業資金を贈与した書類

 
「そもそもその贈与が特別受益にあたるのか」などの争点もありますが、まずは受益者が生前に特別受益を得ていた証拠を、誰の目から見ても明瞭に示さなければなりません。

山本さん一家の相続トラブル例で言えば、妹は姉が婚姻時に3,000万円を父親から譲り受けていた通帳履歴誓約書などの書類を提示します。
 

①生前贈与を受け取っていた書類

●現金や預貯金を引き出した記録を残す資料として、銀行口座の取引履歴や預貯金通帳の残高が参考書類です

ただ現金をそのまま手渡しで受け取ったとなると、銀行口座の取引履歴や預貯金通帳の残高などの資料不足となり証拠取得が難しいことが考えられるでしょう。
 

・現金受取後の高額な購入履歴の書類
銀行口座の取引履歴
・預貯金通帳の残高

 
しかし現金を受け取った後に高額なものを購入した場合、その履歴資料が手元にあれば、時期と金額から遡って、贈与された現金で高額なものを買ったという証拠になり、特別受益が認められることもあります。
 

②不動産を贈与された書類

●不動産の特別受益を示す証拠は、不動産登記の書類が最も有効です

この不動産登記を取得することで、「いつ・誰に・誰のものから・誰になった」などの記載が書かれているので、不動産の持ち物の所有者がいつ移ったのか確認することができます。
 

③自家用車が贈与された書類

●自家用車の特別受益を示す証拠は、自動車の名義変更など、取引が確認できる書類です
例えば自動車の車検証や購入履歴などの取引履歴があれば証拠となります。
 

④学費などの教育費を贈与した書類

●学費や教育費による特別受益を示す証拠は、学校へ問い合わせることで取得できます

特に贈与税の非課税枠を利用した教育資金の特別受益であれば、被相続人の名義で学校に振り込まれているでしょう。
 

・発行された領収書
・学費納付額を学校に問い合わせ

 
学費納付額を確認して知った金額や、この確認作業も証拠になります。
 

⑤生活費用の贈与を受けた書類

●生活費用などの特別受益を示す証拠は、クレジットカードや口座取引等の履歴です
明細表があれば尚良いでしょう。
 

⑥新たな事業資金を贈与した書類

●新事業で支援を受けた特別受益の証拠は、開業時期に被相続人から資金譲渡を受けていたことを示す書類を集めます

銀行口座の入出金の履歴や、預金通帳の動きによって、一連のお金の動きを示す書類が必要です。
 

・銀行口座の履歴
預金通帳
ラインやメールなどのやりとり

 
またラインメール、手紙ボイスレコーダーなどで、資金提供の証拠はないでしょうか。
このようなやりとりも、特別受益を受けた証拠に繋がります。
 

特別受益の証拠の主張は、弁護士に相談

特別受益の証拠の主張は、弁護士に相談
●確実に特別受益の証拠を主張するなら、弁護士に相談する方法が適切です

特別受益の証拠集めは自分でもできますが、時間がかかる上に、間違った書類を集めてしまうと後々トラブルになる可能性も出てきます。

専門家に依頼するもしくは、相談するだけでも状況が変わるかもしれません。
 

弁護士に相談するメリット

特別受益を証拠集めの段階から、弁護士に相談するメリットは以下です。
 

<特別受益の主張を相談するメリット>
証拠集めをしてくれる
②交渉などを代理人として請け負ってくれる
いい結果が望める
④特別受益に該当するか正しく判断できる

 
また遺産分割協議をこじらせて未了のまま放置してしまうと、期間内に各種手続きを済ませることで得られる特別控除などの、相続税の特例も享受できません

後々相続人の一人が亡くなると、さらに遺産分割は複雑になるため、早め早めに特別受益の証拠集めをして、解決した方が良いのです。
 

①証拠集めをしてくれる

専門家は特別受益の証拠をやみくもに集めるのではなく、どの資料を集めたらいいか、どのタイミングで請求できるかなどを、的確にサポートしてくれます。
 

②交渉などを代理人として請け負ってくれる

交渉や調停などでは精神的なストレスがかかることが多く、自身で手続きをするのには、骨が折れる作業です。
専門家に依頼することで、遺産分割の際に生じる労力を軽減できます。
 

③いい結果が望める

自分で手続きをすると権威性がなかったり、証拠集めが不十分になる結果もあるでしょう。
専門家が主張することで、いい結果が期待できます。
 

④特別受益に該当するか正しく判断できる

特別受益を主張するには、正しい知識を持って適切な方針へ進めなければなりません。

特別受益に該当するか?」
「特別受益が認められないのでは?」

など、的確な指示を出すために専門家は頼りになる存在です。
 

 

最後に

以上が特別受益を主張する際、証拠となる書類です。
ただ特別受益を争う前に、なぜその生前贈与(遺贈・死因贈与)が行われたのか、故人の遺志や主張を示す書類はないか、確認をしてみてはいかがでしょうか。
 

遺言による特別受益の持ち戻し免除
・婚姻関係20年以上の配偶者への、居住用不動産の贈与
介護などの行為に対する見返りとしての贈与

 
…などなどの可能性があるかもしれません。
また、兄弟のひとりであっても病気等で就労が困難など、生活保障のための贈与も考えられます。

相続トラブルは冷静になり、状況を俯瞰的に把握しながら、調停や裁判へ持ち込むかなど、諸々の判断を行うと良いでしょう。
 

特別受益の持ち戻し免除については、下記に詳しいです。
不公平をなくす「特別受益の持ち戻し」とは?特別受益は10年で時効?

 

まとめ

特別受益を主張する証拠とは
・受益者が認めない時、証拠が必要
・現金受取後の高額な購入履歴の書類
・銀行口座の取引履歴
・預貯金通帳
・不動産登記の書類
・自動車の車検証や購入履歴など
・学校で発行された領収書
・学費納付額を学校に問い合わせる
・ラインやメールなどのやりとり

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