相続税対策に不動産購入が注目されるのはなぜ?納得できる3つの理由
2022/8/28
相続税対策では「不動産を購入した方が節税対策になる」と聞きますよね。
被相続人から相続された財産を現金で持つとそのまま相続税額が算出されます。
一方、不動産を購入すると、不動産財産の相続税額を算出する基準となる「相続税評価額」が低くなります。
そのため「相続税対策なら、不動産を購入した方が良い」と言うからくりです。
今回は最近注目を集めている相続税対策として、相続税評価額下げる不動産購入について、より詳しく解説します。
相続税対策に不動産購入が注目されるのはなぜ?
納得できる3つの理由
相続税対策に不動産が選ばれる3つの理由
今、相続税対策に不動産を購入する人々が多いですが、その具体的なメリットは、どのようなものがあるでしょうか。
現在、相続税対策に不動産購入を進めている人々から、特に注目される3つの理由は下記です。
<相続税対策に不動産を購入する3つの理由>
(1)相続税評価額が低い
(2)賃貸にすると相続税評価額が下がる
(3)金融機関からの借り入れで債務控除
ここで「意外!」の声が多いポイントが、(3)金融機関からの借り入れです。
被相続人に遺産がある場合、相続税対策には遺産で不動産を購入する人が多いでしょう。
けれども思った以上に多くの被相続人が、生前に金融機関からの借り入れ資金を基に、相続税対策に不動産を購入しています。
また相続税対策には、戸建て不動産の購入よりも、分譲マンションの購入が多い点も特徴的です。
それでは上記3つの理由を、下記より深く掘り下げていきます。
(1)相続税評価額が低い
現金や預貯金財産として相続するよりも、不動産の形で相続することで相続税額が下がる可能性が、相続税対策に不動産を購入する理由のひとつです。
不動産財産の相続税額は「相続税評価額」を基準に算出しますが、この相続税評価額はほとんどが実際の売買価格となる「時価」よりも、各段に安い傾向にあります。
<相続税対策に不動産購入☆相続税評価額>
●一般的に「時価(売買価格)×7割~8割=相続税評価額」です。
このなかで相続財産を評価するのは、下記2点となります。
・土地=路線価や固定資産税評価
・建物=固定資産税評価額
ちなみに一般的に「固定資産税評価額=相続税評価額」になりますが、この固定資産税評価額は、固定資産税を支払うため、毎年持ち主に届けられます。
また「相続税評価額」は1年に1回更新、固定資産税評価額は3年に1回更新で、時価の7〜8割はこの2点が目安になっているのです。
(2)賃貸にすると相続税評価額が下がる
相続税対策で不動産購入した場合、さらなる節税対策を進めるためには、購入した不動産を賃貸に出すと良いでしょう。
賃貸に出すことで「貸家評価」として相続税が算出されるため、居住用の不動産よりも、さらに安い相続税額が提示されます。
<相続税対策に不動産購入☆賃貸>
●不動産は土地と建物に分けて相続税評価額が算出されますが、下記は時価1億円の不動産を相続した事例です。
(1)相続税評価額
・土地…相続税評価額4千500万円
・建物…相続税評価額3千万円
・合計…7千500万円
(2)賃貸による賃家評価額
・土地…4千500万円(相続税評価額)×賃貸割合80%(1-20%)=3千600万円
・建物…3千万円(相続税評価額)×賃貸割合70%(1-30%)=2千100万円
・合計…5千700万円
このように時価1億円の不動産が、相続税評価額では7千500万円に、賃貸にすることで5千700万円が相続税額を算出する基準(相続税評価額)になる訳です。
また相続税対策で不動産を購入して賃貸にすると、ご自身で住むことも可能ですし、思いのままにできます。
ですが処分の方はどうでしょう。
「急に建物がいらなくなった」と、なった時簡単には処分できません。
そのため活用方法が限られてしまうと、物件的な価値も下がるとみなされてしまいます。
そして価値を下げた物件は、おのずと相続税評価額が下がるというわけです。
(3)金融機関からの借入で債務控除が受けられる
実は、相続税対策で土地や建物を購入することや賃貸をする以外にも、金融機関からの借入で債務控除が受けられることはご存知でしょうか。
債務控除とは、相続財産から差し引き計算できることを言います。
被相続人がマイナスの遺産を持って遺産を相続したとしても、遺産総額から債務を控除できるのです。
相続税対策の注意点
以上が、相続税対策として不動産を購入する人が多い理由ですが、被相続人が相続発生(亡くなる)直前に購入した場合、下記のような3つの注意点があります。
<相続税対策に不動産購入をする注意点>
(1)相続税対策とみなされた時は無効
(2)相続後3年以内に不動産を売却
(3)被相続人の意思で購入しなければ対策は無効
確かに被相続人としては、子どもや孫に少しでも相続税負担を少なくしたいと対策を講じるのですが、税務署としては節税目的を良しとしないためです。
また被相続人本人が認知症などの事情で自己判断ができない場合、その最中に相続税対策として不動産を購入したとしても、周囲の意図として無効になる可能性はあります。
それでは、上記3つの注意点に関して、より詳しく解説します。
(1)相続税対策とみなされる時は無効になる
明らかに相続税対策だと分かるタイミングや状況で、不動産を購入している場合は、純粋な不動産購入ではないとされ、無効になる可能性は高いです。
ただ実際に、正しい線引きがあるというわけではなりません。
<相続税対策とみなされる不動産購入>
・購入した年が80歳
・購入目的が相続税対策と記入してあった
…などで却下された事例があります。
難しいのは、これらのチェックは税務署でする点ですが、「明らかに相続税対策」とみなされるような文章は控えるようにしましょう。
(2)相続後3年以内に不動産を売却
相続税対策として不動産を購入後、相続を済ませてから早々に売却して現金化しようと検討する相続人がしばしばいますが、このような行為も注意をした方が良さそうです。
<相続税対策の不動産購入なら、3年は売却しない>
●相続税を申告してから3年間が目安です。
…売却を検討しているなら、相続の申告を済ませた後、3年間を控えます。
と言うのも、税務署は過去3年間まで遡り、購入記録や売却記録まで全て目を通すのが通例です。
そのため税務署が審査に入った時、3年以内に不動産を売却してしまうと、相続税対策と疑われてしまうので注意が必要です。
●物件はしばらく保有しておくと安心でしょう。
(3)自身の意思で購入しなければ対策は無効
基本的な事柄ですが、相続税対策として不動産を購入するならば、本人の意思で契約した場合のみ、相続税対策ができると考えてください。
特に税務署でチェックされる箇所は、本人の直筆サインです。
<相続税対策の不動産購入は、被相続人の意思で>
・被相続人が病気でペンと握れないほど体調が悪い
・精神的にも意思を決定できる状態でない
・認知症などの症状により、正確な判断が期待できない
…当然ですが、仮に以上3つのような状況であれば、税務署は被相続人本人の意思での購入はできないと判断する可能性があります。
●また、代筆や代理人が契約を行った場合でも同様です。
これらを被相続人が自分で購入しないと、税務署に否認される可能生が高いでしょう。
相続税対策として不動産を購入する場合、トラブルを回避するためにも、早い段階で元気なうちに、被相続人本人の意思で購入を決定しなくてはなりません。
最後に
いかがでしたでしょうか、今回は相続税対策として不動産を購入する理由と、3つの注意点をお伝えしました。
不動産活用方法は3種類あるので、それぞれの状況に合わせて活用すると良いでしょう。
また相続税対策であれば不動産購入は、戸建て住宅よりもマンション購入、居住用の不動産よりも賃貸の不動産の方が節税できます。
これはマンションの敷地面積が持ち分割合により少ないため、比例して相続税額が低くなりやすいこと、賃貸の場合は借地権割合(借家権割合)による減額が期待できるためです。
詳しくは下記記事でお伝えしています。
重なる部分もありますが、興味があればどうぞコチラもご参照ください。
・相続税対策にマンション購入がいいって本当?その理由と仕組みを解説
相続税対策に不動産購入、3つの理由
・現金よりも不動産の方が相続税評価額が低い
・不動産を賃貸にすることで相続税評価額が低くなる
・金融機関からの借入で債務控除が受けられる