相続税の税務調査とは?いつ頃?時効や何年前まで遡って調査するの?

2023/3/10

相続税の税務調査とは?時期はいつ頃?時効や何年前まで遡って調査するの?
相続税の税務調査とは、相続税申告内容に漏れがないか、税務署が調査をすることです。相続税の申告手続きは複雑ですから、真面目に申告をした人でも気になる事柄ですよね。

・相続税の税務調査とは?
・相続税の税務調査が入る割合や傾向は?
・相続税の税務調査が入る時期、タイミングは?
・税務署はどこまで調べているの?
・「臨宅」とは?どのように進むの?

今回は相続税の税務調査について、いつまでに調査が入りやすいか、調査はどのように進み、申告漏れと判断されるとどうなるか…、詳しく分かりやすく解説します。
 

 

相続税の税務調査とは

贈与税の計算方法とは?
●相続税の税務調査とは、相続税の申告にミスや申告漏れがないかを税務署が調査することです

とは言え、申告をした全てに対して相続税の税務調査が入る訳ではなく、毎年年間で相続税申告全体の20%~25%に行われます。
 

<相続税の税務調査とは:割合>
●相続税の税務調査が入る割合は5.6人に1人です
追徴課税を調べることが目的
・相続税の税務調査が入った80%以上が追徴課税

 
ただし相続税の税務調査は「正しい相続税額」を調べるとも限りません。
税務署は税金を少しでも多く回収する追徴課税を目的としています。

そのため払い過ぎた相続税は税務調査で還付されることはなく、相続税の過払いが懸念される場合には、相続人が自ら調べて申告しなくてはならないでしょう。
 

相続税の税務調査が入る時期

相続税の税務調査が入る時期
●相続税の税務調査は一般的に、申告をした1年後か2年後の8月~11月とされます

法的に相続税の税務調査はいつ入ってもおかしくないのですが、これは税務職員の人事異動などが遠因にあるでしょう。

…税務署の人事異動は7月、人事異動が落ち着いてから税務処理が忙しくなる年末年始を避けた時期に、相続税の税務調査を行うためです。
 

<相続税の税務調査とは:入りやすい時期>
●相続税申告の1年後・2年後の、8月~11月

 
では「何年経ったら相続税の税務調査が入らないと確定するの?」と言えば、時効となる5年が目安となります。

ただし故意に相続財産を隠した場合には時効は7年になりますから、相続税申告から7年後までは税務調査が入る可能性が出てくるでしょう。
 

2023年8月1日に両親が亡くなったら?

●2023年8月1日に両親が亡くなり、相続が発生した場合

相続税の申告期限は10ヶ月ですので、2023年の8月1日の相続発生から10か月後に相続税申告を行ったとします。

相続税の税務調査で悪質なケースは稀ですので、一般的には5年後の2029年6月までに相続税の税務調査が入らなかった場合、このまま調査はないでしょう。
 

<相続税の税務調査とは:具体例>
(1)2023年8月1日…相続発生
(2)2024年6月1日…相続税申告期限

(3)2025年7月~2027年6月(申告から3年)…調査が入りやすい
(4)2027年7月~2029年6月(申告から5年)…調査が入る可能性

(5)2029年7月~2031年6月(申告から7年)…悪質な場合の延長期限
(6)2031年7月~…調査の可能性なし

 
相続税の税務調査は、決して全ての相続税申告からランダムに選定している訳ではありません。事前に調査をして追徴課税の可能性が高い相続に対して追徴課税を行います。

そのため反対に言えば、一度相続税の税務調査が入った家は、高確率で追徴課税が掛かる(80%)訳です。
 

相続税の税務調査が入ったら?

●相続税の税務調査自体は、多くが1日で完了します

ただし相続税の税務調査によって税務署は、当初申告した相続税申告の内容の相違を指摘し、その指摘に基づいて相続人側の調査や対応が求められるため、手続き関連で時間が必要です。
 

<相続税の税務調査とは:調査期間>
●相続税の税務調査が入ってから全て完了するまでの目安は、1~3ヶ月です。
・税務署から相続税申告の指摘
・申告内容の調査や検討(相続人側)
・税務署による追加調査の可能性

 
…などなどです。
相続税の税務調査が1日で終わらなければ、再度別日に設定されますが、夜中まで調査を続けるケースはほとんどなく、午前10時頃~夕方頃までで終わります。
 

相続税の税務調査で調べる事柄

相続税の税務調査で調べる事柄
●相続税の税務調査で税務署が主に調べる事柄は、①名義預金、②タンス預金、③生前贈与、が多いです

相続税の税務調査で指摘されやすい項目は、「タンス預金」などと呼ばれる現金貯金や生前贈与などです。
 

<相続税の税務調査とは:調べる事柄>
①名義預金…故人の財産を相続人名義の口座に預けること
②タンス預金…金融機関に預けず、自宅などに現金を保管する
③生前贈与…故人が生前に財産を贈与した証拠を調査する

 
生前贈与の調査は、例えば親族間で預貯金財産の大きな移動がないかを調べます。
また故人が生前に借金を肩代わりしていた場合にも、生前贈与とみなされるでしょう。

少し前までは地方銀行に預ける「遠隔地預金」も多かったものの、マイナンバーにより回避できなくなりました。
 

税務署はどこまで調査しているの?

●税務署は相続税の税務調査を行うまで、相続発生から10年前まで遡って全てを調べています

故人が亡くなると遺族は役所へ死亡届を出しますが、この時点で税務署は役所から死亡情報を受け、固定資産税など資産・財産情報を共有します。
 

<相続税の税務調査とは:どこまで調査している?>
①不動産情報
・固定資産税
・不動産の名義変更(法務局より)

②金融資産情報
●故人と相続人の情報を照会できる
・金融機関の残高や履歴
・株式情報、履歴
・証券情報

③生命保険情報
・契約者変更情報

④収入情報
・所得税の確定申告
・給与の源泉徴収票
・支払調書
…など

 
税務署は相続税の税務調査に入るまで、追徴課税が予測されるほとんどの情報を照会しています。
 

相続税の税務調査で「臨宅」とは

相続税の税務調査で「臨宅」とは
●「臨宅」とは、相続税の税務調査を一般家庭まで訪れて行うことです

臨宅調査が入ると8割以上が追徴課税に入るとされます。
前述したように午前10時~夕方に掛かって行われ、午前中は軽い調査ではあるものの、午後は相違点を突っ込まれやすくなるでしょう。

それでは相続税の税務調査「臨宅」で調査官はどのようなところを見ているのでしょうか。
 

<相続税の税務調査とは:臨宅>
●故人(被相続人)は高齢者が多く、紙の記録は注目します。
・住所録
(銀行や証券会社の連絡先など)
・相続人の目線

 
1987年に公開された映画「マル〇の女」などが有名ですが、本棚の裏に隠し部屋があった!などの演出に「大袈裟な…」と思う人もいるかもしれません。

けれども調査官によると、隠し部屋があるなどは、それほど珍しいケースでもないようです。
 

調査員は世間話をする

●相続税の税務調査での臨宅では、調査員は世間話をしながら調査を進めるケースが多くあります

相続税の税務調査で相続人は緊張しながら迎えることになりますが、午前中はわりと緩い雰囲気雑談をしながら調査が進むとの体験談は多いです。

相続人はついつい気を緩ませて話をしますが、午後になると話との相違が指摘されることもしばしばです。
 

<相続税の税務調査とは:世間話は避ける>
●例えば、夫を亡くした妻の体験談で、下記のような事例がありました。
調査員「物がない家ですねー、断捨離とかされているのですか?」

「いえいえ、最初から何も買っていないのですよ。
主人は仕事人間でしたから、特別な趣味もなかったので…」

調査員(午後の聞き取りにて)「この通帳のここ、○○月○○日に現金150万円、○○月○○日に現金100万円が引き落とされていますよね。
趣味のない御主人が、どこにお金を使われたのでしょうか?」

 
…などの体験談を見受けます。
この他にも転勤話があれば、調査官は転勤先に地方口座がないか「遠隔地預金」を調べるでしょう。海外であれば海外口座の可能性も出てきます。

入院生活が長ければ、誰が治療費の支払いを管理していたか…、治療費以外で相続人が使っていたお金はないか…、なども捜査対象です。
 

相続税の税務調査の先にあるもの

相続税の税務調査の先にあるもの
●相続税の税務調査によって、故意に隠したと判断されると「重課税」が追徴課税されます

相続税の基礎控除は3,000万円+(相続人の人数×600万円)ですから、それを越えて相続税申告を行う世帯は、それなりの相続財産を持っているでしょう。

税務署も相続財産が高く、追徴課税の可能性が高い家から相続税の税務調査に入るため、「意図的な申告漏れ」となった場合の追徴課税は40%と高いです。
 

<相続税の税務調査とは:追徴課税>
①過失と判断された場合
過少申告加算税…新たに納付する税金の10%

②故意と判断された場合
●重加算税
申告漏れがあった…過少申告加算税に代えて35%
無申告…無申告加算税に代えて40%

 
無申告加算税」とは、相続税が発生したにも関わらず期限内に相続税の申告をしていない場合に請求されます。
 

相続税の申告をしていないケースに関しては、下記をご参照ください。
【沖縄の相続】「無申告加算税」とは?相続税申請の期限後申告は加算される!

 

 

最後に

以上が相続税の税務調査について、調査が入りやすい時期タイミング、調査の流れや注意点をお伝えしました。

故人(被相続人)相続人の預貯金口座を税務署は照会できるので、生前贈与も遡る事10年前まで明瞭になりやすいです。

このような生前贈与を疑われた時、最初に多くは税務署から「お尋ね」と呼ばれるアンケート調査が入るきっかけが多くあります。相続税の税務調査には、このようなさまざまな予兆も見受けるでしょう。
 

※相続税の申告期限10ヶ月のスケジュールなどは、下記をご参照ください。
【沖縄の相続】相続税申告期限10ヶ月とは?相続人のスケジュールとやる事

 
 

まとめ

相続税の税務調査とは?

●相続税の税務調査とは?
・相続税の申告漏れがないか税務署による調査

●相続税の税務調査が入る時期
・申告の修正の有効期限は5年
・悪質な場合の有効期限は7年まで延長
・申告の1年後・2年後の、8月~11月
・税務調査期間は1ヶ月~3ヶ月

●調べる事柄
・10年間に遡り調査する
・故人(被相続人)の資産情報や履歴
・被相続人の資産情報や履歴

●臨宅とは
・一般家庭に税務署員が調査に訪れること
・1日~2日ほどで終わる
・午前10時頃~夕方頃まで
・午前中は緩く、午後から追及もある
・世間話のように見えて調査のことも多い

●追徴課税の内容
①過少申告加算税…追加する税金の10%
②重加算税
・申告漏れがあった…過少申告加算税に代えて35%
・無申告…無申告加算税に代えて40%

●税務署から「お尋ね」が来ることもある

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