【沖縄の実家相続問題】こじれるトラブルに見る共通点とは
2021/12/18
全国的にも相続にトラブルはつきものですが、沖縄では特有の相続トラブルが後を絶ちませんよね。
沖縄に限らず起きる相続トラブルでは、実家(不動産)など分割が難しい相続財産の分割問題などがあります。
親の介護に費やした労力に対して寄与分(介護など、被相続人に貢献してきた相続人に対して公平であるよう、加味される金額)が足りない…、などの事例も多い傾向です。
※詳しくは別記事「沖縄で相続時にトラブルが多発する家族☆5つの共通点」をご参照ください。
ただ沖縄では特有の相続トラブルも数多くあります。今回は沖縄の相続トラブルに多い問題と、それぞれのトラブル事例に見る解決策の一例についてお伝えしますので、どうぞ参考にしてください。
【沖縄の実家相続問題】
こじれるトラブルに見る共通点とは
沖縄の軍用地は私有地が多い
沖縄の相続問題で最も特徴的なのが軍用地トラブルです。先の大戦により地上戦となった沖縄では、私有地が強制的に軍用地になった歴史があります。
そのため本州(他県)の軍用地はほとんどが国有地で、私有地は全体の10%ほどであるのに対して、沖縄県の軍用地は40%以上が私有地です。特に基地が多い北部ではほとんどが私有地と言って良いでしょう。
ではなぜ、沖縄で軍用地の相続トラブルが起きるのかと言えば、実際の収益となる時価に比べて、相続税を決定するのに算出する固定資産評価額とに大きな差がみられるためです。
そのため相続税対策や資産運用のため、敢えて軍用地を購入する人々も絶えません。
【 沖縄の相続問題☆軍用地の相続トラブル 】
● 同じ軍用地でも場所によって異なりますが、返還される可能性が著しく低い土地などは土地の賃料(果実)も高く、時によって現実的な時価が実際の賃料と比較して50倍にも上るケースもあるほどです。
・ 相続税の側面から見ると財産評価基準書に準じて評価され、時価と比較して著しく低くなる土地が多い傾向にあります。
・ ただし、遺産分割において採用されるのは時価です。
※ この違いにより、それぞれの相続人が「相続後に思っていた内容と違った…。」などと悔恨を残したり、不満を感じるなどでトラブルに発展するケースがあります。
このような沖縄特有の相続トラブルを避けようと、なかには生前贈与による解決を試みる方も多いのですが、時価は生き物ですからその時々で評価額が変化するため、せっかく生前贈与をしても相続時点でトラブル発生!となる事例は多いです。
ただし一般的な土地とは全く性質が異なるため、見方を変えると沖縄での相続がスムーズに進む項目とも言えます。
【 沖縄の相続問題☆軍用地の性質 】
● 一般的な土地(不動産)は、自由に土地(不動産)を活用できる点が大きな違いです。例えば普通の不動産なら、土地(不動産)を売却して相続人への分配もできます。
→ 一方、沖縄で軍用地を相続しても自由に活用できません。つまりは賃料(果実)が均等に分配されるよう、相続人全員に分配することでトラブルを避けることも可能です。
沖縄で軍用地を相続する場合、その計算方法も一般不動産とは違います。公用地用の評価倍率表を用いて計算しますが、一般的には計算も慣れていませんから、本来であれば弁護士に依頼したい案件です。
沖縄のトートーメー相続問題
人は亡くなって七代目にして家(ヤー)を守る「カミ」となる…、本州のように檀家制度を持たず、沖縄独自の祖霊信仰が根付く沖縄では、トートーメーと相続が大きく絡んでいます。
「トートーメー」とは位牌を差しますが位牌自体は「イフェー」と言われているように、単なる物体を差す言葉ではなく、位牌に宿るご先祖様・祖霊様も含めた総称です。
ですから全国的な「先祖代々墓」ではありませんが、「先祖代々位牌」とも言い表すことができるかもしれません。
法的にご先祖様を供養する祭祀財産は相続税の課税対象ではなく、祭祀財産を相続しても、その他の預貯金や不動産財産などの遺産分割に影響はありませんが、沖縄ではトートーメーによる相続トラブルがしばしば発生しています。
【 沖縄の相続問題☆トートーメー継承と相続 】
● 昔から沖縄では、トートーメーは父方の血を引く嫡男(長男)が継承するとされ、トートーメーを継承すると言うことは、家督を継ぐことを意味します。
※家督を継ぐ=財産全てを相続することと同義です。
→ 一方、現代の法律では「遺留分」を請求する権利がそれぞれの相続人にあり、昔のように長男が財産全てを相続することは、他の相続人の同意がない限りできないことになります。
※ そのため昔ながらの風習に倣い財産全てを相続しようとする長男に対して、他の兄弟(など相続人)に異議があった場合、時にはトラブルに発展してしまう事例が多い傾向です。
ただ沖縄の相続問題とは別に、タブーの多い沖縄のトートーメー継承問題は深刻化しています。沖縄は個人所有の墓地に建つ個人墓も多く、昔のように門中(父方血族の集まり)の絆も薄くなった今では、模合(お金を出し合う習わし)も少なくなりました。
そんななかトートーメーを継承することは、経済的にも労力的にも個人への負担は大きくなりがちです。
ですから、このような沖縄の相続トラブルにトートーメーが絡んだケースでは、それぞれの言い分をよくよく聞くと、お互いに理解し合える部分も少なくありません。
【 沖縄の相続問題☆トートーメーの永代供養 】
● 相続人全員の合意があれば問題はないのですが、現実的にトートーメーが絡んだ沖縄の相続トラブルでは現代の民法に倣うため、まず長男が全財産を相続することはできません。
→ トートーメーを継承した長男が譲歩することになるでしょう。ただし一方で現代は長男の負担を軽くする方法もあります。トートーメーの永代供養です。
さらに管理や維持が経済的にも労力的にも大変なお墓も永代供養をするなど、負担の残らない方法が模索されるようになりました。
※詳しくは別記事「【沖縄特有の相続問題】トートーメー継承トラブルと解決事例」でお伝えします。
沖縄で相続トラブル解消
ここまで沖縄特有の相続トラブルをお伝えしましたが、最後には「相続人全員が同意をする」ことが解消のためには欠かせません。
どうしてもお互いの主張が平行線を辿るようであれば、最終的には財産を共有名義にする「共有分割」もありますが、後々再び相続人間(兄弟など)が揉める種にもなります。
※詳しくは別記事「【沖縄の実家相続問題】共有名義での解決はトラブルの元?」でお伝えしています。
【 沖縄の相続問題☆相続トラブル解消 】
★ 相続人間(兄弟間)で理想的な相続の優先順位を決めて話し合うよう、意識してみてはいかがでしょうか。
→ 一般的には相応の不動産をそれぞれ分ける現物分割が理想的です。続いて不動産を相続した人が、他の相続人に代償(その分の現金)を支払う代償分割、不動産を売却して均等に現金を分ける換価分割、最後に不動産の持ち分を分ける共有分割となります。
相続方法と優先順位については別記事「【沖縄の相続問題】不動産財産の分割方法☆優先順位を決める」でお伝えします。(2022年1月以降に掲載しますので、少々お待ちください。)
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄に多い相続トラブルの特徴として、軍用地の相続問題、そしてトートーメー継承に伴う沖縄の相続問題についてお伝えしました。
沖縄で相続トラブルが起きる家族の特徴として、現代の全国的な傾向よりも本家と分家意識が強く、相続人同士のコミュニケーションが日ごろから取れていないことが多い傾向です。
「公平ではない」「平等じゃない」の想いが沖縄に限らず相続トラブルの火種になりがちですが、実は物質的な不満ではなく、感情的な側面が大きかったりします。
相続前後からコミュニケーションを密に取り、お互いに必要な時には心、そしてお金も折に触れて出すように心がける兄弟には、比較的沖縄でも相続トラブルは少ない傾向です。
まとめ
沖縄特有の相続トラブルとは
●軍用地の相続が多い
・時価と固定資産評価額との差が大きい
・賃料(果実)を平等に分配する方法がある
・計算も違うため早い段階で弁護士が入ると良い●トートーメー継承に伴う問題
・トートーメー継承=家督を継ぐと言う意識(長男)
・「家督を継ぐ」は相続人全員が同意した場合
・トラブル発生時は長男が譲歩することが多い
・長男もトートーメーやお墓継承の負担は大きい
・現代の民放に合わせた解決法が多い
・トートーメーやお墓は永代供養をする選択●相続トラブルを円満に解消するために
・相続方法の優先順位を共有する
・現物分割/代償分割/換価分割/共有分割