【沖縄の相続】借金に役立つ限定承認とは?相続放棄の期限3か月が勝負
2022/12/21
借金などマイナスの財産を発見した時、沖縄の相続では限定承認か相続放棄かの選択で迷う人も少なくありません。
そんな沖縄の相続で注目される「限定承認(げんていしょうにん)」とは、遺産全てを相続しない相続放棄とは違い、負債を遺産で清算する選択肢です。
・限定承認とは?
・限定承認のメリット
・限定承認のデメリット
今回は、沖縄でマイナスの財産があった相続で、限定承認と相続放棄の選択に迷う時に役立つ、限定承認のメリットとデメリットを解説します。
「限定承認」とは
●相続人が選択できる、3種類の相続方法のひとつです
家族が亡くなり相続が発生した時、相続人は3つの相続方法から選択ができますが、この相続方法を見誤ってしまうと、相続する種類によっては、相続人の借金を背負ってしまうこともあります。
(1)単純承認
(2)相続放棄
(3)限定承認
例えば単純承認を選んで、被相続人(故人)に大きな借金を発見した時には、相続人はその借金も背負わなければならないでしょう。
けれどもやみくもに相続放棄を選んでも、被相続人の財産を全部手放さなければならず、大きなデメリットです。
例えば現在住んでいる家が被相続人(故人)の名義だった場合、相続放棄を選んだ相続人は、その家から強制退却しなくてはなりません。
そこで限定承認を選ぶと、遺産で借金を清算して残りがあれば、その分を相続できます。
「とても安心できる選択肢!」と思うかもしれませんが、限定承認もメリットばかりではなく、デメリットもあります。
●沖縄の相続で大切なポイントは、限定承認に限らず、相続方法を選ぶ前に、被相続人(故人)の遺産に相違はないか、細かなものまで確認をすることです
ただし相続放棄や限定承認の申請は3か月の期限がありますので、期限内に被相続人(故人)の遺産を調べて、いずれかの相続方法を選択しなければなりません。
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(1)単純承認
●「単純承認」とは、被相続人(故人)の財産を全て相続することです
民法ではこれを「単純承認」と呼び、相続人が単純承認を選ぶと「被相続人の財産、マイナスもプラスも含めた全て」を継承します。
つまり相続人が単純承認を選んだ後で、被相続人(故人)に大きな借金があった場合には、相続人は借金の返済義務が生じる訳です。
●相続人が手続きをせずに3か月を過ぎた場合、単純承認とみなされます。
・相続放棄申請の期限…3か月
・限定承認申請の期限…3か月
人生のなかで相続人になる経験は少ないですし、一般的に相続知識が豊富な人も少ないのですが、「知らなかった」と行政に相談をしても、3か月を過ぎた時点で単純承認になってしまうので、借金の有無はまず確認を取ると良いでしょう。
・【沖縄の相続】相続放棄の決定期限3か月は延長できる?単純承認後に借金が発覚したら?
(2)相続放棄
●「相続放棄」とは、被相続人(故人)の財産全てを放棄することです
沖縄で相続放棄か限定承認かを迷う相談では、住居が被相続人(故人)の名義だったケースが多いでしょう。
相続放棄を選んだ場合、借金などのマイナスの遺産を引き継がないため返済義務は生じませんが、不動産財産も放棄しなければならず、慣れ親しんだ住居から退去しなければなりません。
●ただし、相続放棄をしたからといって連帯保証人の返済責任は消滅しません。
例えば親の借金にあたり長男が連帯保証人になっていたとして、親が亡くなり相続が発生した時に相続放棄をしても、連帯保証人としての返済責任は残ります。
また死亡保険金や死亡退職金が発生しても、非課税枠の利用ができなくなるので、この点にも配慮しながら、相続放棄の選択をしなければなりません。
・【沖縄の相続】「相続放棄」とは?借金回避で相続放棄を選ぶメリットとデメリットを解説
(3)限定承認
●「限定承認」では、被相続人(故人)のプラス資産の範囲内で負債を承継します
沖縄の相続で限定承認を選んだ事例では、被相続人(故人)に借金5,000万円があり、相続人が被相続人(故人)名義の住居に住んでいました。
●この事例では住居の相続分が500万円だったため、500万円のみを負債者へ返済する限定承認を選択しています。
このように沖縄の相続で限定承認が選ばれるのは、借金などマイナス遺産の実態が分からない時にも、相続したプラス遺産の範囲内で収まるためです。
ただし相続放棄同様、沖縄の相続でも限定承認は3か月以内の申請なので、早急に決定しなければなりません。
限定承認のメリット
●沖縄の相続で限定承認には、主に3つのメリットがあります
前述したように沖縄の相続では限定承認を選ぶことで、「住居を維持できる」メリットを挙げる相続人が多いですが、この他にもプラス遺産を超えた借金返済の責任がないなど、他の理由で限定承認を選ぶ相続人もいるでしょう。
(1)負債を相続しなくてもいい
(2)不動産を維持できる
(3)先買権が使える
一方で被相続人(故人)と生前から疎遠になっていた相続人で、マイナス遺産が明らかにプラス遺産を超えている場合などは、相続人単独でも申請できる相続放棄も、選択肢のひとつです。
(1)負債を相続しなくてもいい
●限定承認を選んだ場合、負債は相続財産の範囲内で引き継ぐため、超過分の返済義務がありません
単純承認で相続した場合、相続人は相続人自身の財産を持ち出してでも、引き継いだ被相続人(故人)の負債を返済しなければなりません。
・単純承認…債務超過の場合、相続人自身の財産を守る保証がない
・限定承認…債務超過の場合、相続人自身の財産は保守できる
そのためマイナス遺産の債務超過があった場合、相続人自身の財産を守る保証がありませんが、沖縄の相続で限定承認を選んだ場合、プラス遺産の範囲内での返済として、相続人自身の財産を保守できます。
(2)不動産を維持できる
●被相続人(故人)名義の不動産を維持したい場合、相続分の負債を債務者へ返済できれば、借金などのマイナス遺産があっても不動産を維持できます
沖縄の相続で限定承認を選択するケースに多く、限定承認を家庭裁判所で申し出ることで、プラスの財産とマイナスの財産を精算できるメリットです。
・相続放棄…被相続人(故人)名義の不動産も相続できない
・限定承認…被相続人(故人)名義の不動産の範囲内で返済できれば、維持が可能
例えば被相続人(故人)名義の住居など、債務を弁済できれば相続財産は換価処分されます。
不動産の金銭を支出できるのであれば、不動産の換価処分されることがなくなり、手元に残すことができるのです。
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(3)先買権が使える
●「先買権(せんばいけん)」とは、相続した不動産が競売にかけられた時に、優先的に不動産を購入する権利です
この先買権は限定承認をした相続人にのみ認められた権利で、何とか被相続人(故人)名義の住居を確保したい時に役立つため、沖縄の相続で限定承認が選ばれる理由でもあります。
・相続放棄…先買権の権利はない
・限定承認…先買権の権利がある
不動産の評価額を鑑定するのは、家庭裁判所が選任した鑑定人です。
先買権を利用するには、家庭裁判所に申請して鑑定人を選んでもらいます。
限定承認のデメリット
●限定承認は相続人全員で決めるなど、特に手続きや税制度でのデメリットがあります
上記でお話したように、沖縄の相続で限定承認はプラス遺産の範囲内で引き継ぐことができるため、検討する人が多いのですが、手続きの手間暇や税制度において、デメリットもある点は理解が必要です。
(1)相続人全員の同意が必要
(2)譲渡所得税がかかる
(3)債務手続きに手間が多い
(4)相続税の減税制度の対象外
相続放棄にしろ限定承認にしろ、申請には3か月の期限があります。
その間に被相続人(故人)の遺産を調べて、相続人全員で遺産分割協議を行うにあたり、限定承認の可能性も探らなければなりません。
けれどもその分、沖縄の相続では限定承認のメリットも大きいです。
また3か月の範囲内だからこそ、相続放棄ではなく限定承認を選ぶ事例も多くあります。
(1)相続人全員の同意が必要
●限定承認をの申請は相続人全員の決定により行います
限定承認の申請は家庭裁判所に提出しますが、この際、相続人全員の決定事項として申し出るため、相続人全員の同意が不可欠です。
つまり相続人のうち反対するものがいれば、限定承認ができません。
・相続放棄…相続人がひとりで申請できる
・限定承認…相続人全員で申請する
沖縄の相続で限定承認の承諾を得るためには、申請期限である3か月以内に、親族間で話し合い全員の同意を得て行います。
(2)譲渡所得税がかかる
●限定承認では、譲渡所得税がかかります
単純承認など一般的な相続では譲渡所得税とは無縁ですが、限定承認の場合「みなし譲渡」とみなされるため、譲渡所得税がかかる点が大きく違うでしょう。
「みなし譲渡」とは税制上、「被相続人(故人)が販売価格(時価)で財産を売却した」とすることです。
・単純承認…譲渡所得税が掛からない
・限定承認…譲渡租特税が掛かる
例えば被相続人(故人)が3千万円で購入した不動産が、相続発生時に4千万の販売価格(時価)だった場合、差し引き1千万円に対してみなし譲渡益とみなされます。
(3)債務手続きに手間が多い
●限定承認の申請には、債務清算の手続きが必要です
限定承認の申請は家庭裁判所へ申請しますが、この際、相続書類を作成して債務を清算しなければなりません。
そのため家庭裁判所に所定の申請書を提出する際、複雑な処理が必要です。
・単純承認…債務清算の手続きがない
・限定承認…債務清算の手続きが複雑
限定承認を申請するには、まず相続人全員の同意を得た後に、財産目録を作成して家庭裁判所へ「限定承認をする旨の申述」手続きを行います。
(4)相続税の減税制度の対象外
●限定承認では相続にまつわる減税制度を享受できません
限定承認をした場合、単純承認による相続では当たり前に適用された減税制度、例えば、居住用の不動産にまつわる相続での特例などが、適用しないでしょう。
限定承認の選択が適したケース
●遺産のプラスとマイナスの採算が分からない時、不動産を維持したい時に適しています
一般的な単純承認は総合的にプラス遺産が多いのであれば、手続きも楽ですしトラブルも少なく便利です。
また明らかに負債額が多く相続人が自己の財産を守れない状況なら、相続放棄をして不利益から解放される方が良いでしょう。
ただ多額の負債額があるからといって相続放棄をしてしまうと、不動産を維持する権利も失ってしまう可能性があります。
・遺産のプラスマイナスの採算が分からない
・多額の借金が残っている可能性
・被相続人(故人)名義の不動産を残したい
例えば家業をしている場合、不動産の権利を失うことで、行っている場所や設備なども手放さなければなりません。
しかし限定承認をすれば、評価額に沿って家業を受け継ぐことが可能です。
被相続人(故人)の負債がなくなるので、実質債務がない状態で再スタートができるようになるでしょう。
最後に
以上が沖縄の相続で相談の多い限定承認についてです。
ただ沖縄の相続では限定承認の相談自体は多いものの、実際に利用するケースが少ない側面もあります。
・相続開始日をした日から3ヶ月以内
・相続人全員で手続き
以上の2点が、実際に限定承認を利用しない背景にあるでしょう。
決定までには財産目録の作成や調査、相続人同士の話し合いが必要であるにも関わらず、申請期限は3ヶ月以内です。
生前の被相続人(故人)の話や様子から、多額の借金が予想される場合に、沖縄の相続で限定承認を検討するのであれば、早め早めの対処をしてください。
まとめ
限定承認とは?メリット・デメリット
●限定承認とは
・プラス資産の範囲内で負債を承継
●限定承認のメリット
・負債を相続しなくてもいい
・不動産を維持できる
・先買権が使える
●限定承認のデメリット
・相続人全員の同意が必要
・譲渡所得税がかかる
・債務手続きに手間が多い
・相続税の減税制度の対象外
●限定承認が適したケース
・遺産のプラスマイナスの採算が分からない
・多額の借金が残っている可能性
・被相続人(故人)名義の不動産を残したい