遺産相続手続きには期限がある!一年以内に行う12の手続き
2022/10/1
遺産相続の手続きには、それぞれ期限があります。
けれども家族が亡くなると、遺産相続手続きの他にも葬儀や法要など、喪失のショックを抱えたまま、さまざまな事柄をこなさなければなりません。
・やることが多すぎて整理が付かない
・どこから手を付けて良いか混乱している
…このような悩みを抱えて、相談する人も多いです。
そこで今回は、遺産相続手続きの仕方や期限を、12のリストとともにお伝えします。
遺産相続手続き、12のスケジュール
大切な家族が亡くなると、葬儀や法要などを執り行う準備と並行して、下記のような一連の遺産相続手続きを行わなければなりません。
手続きのなかには、専門的な第三者である弁護士や行政書士に依頼できるもの、ご遺族で分担できるものもあるので、精神的に追い込まれることなく、人に頼ることも視野に入れて進めてください。
[1]死亡届提出
[2]公的年金や健康保険の手続き
[3]死亡保険金の手続き
[4]公共料金等の引き落とし口座の変更
[5]相続人確定、戸籍謄本取得
[6]遺言書の有り無し
[7]相続財産の調査
[8]相続放棄や限定承認、単純承認の選択
[9]準確定申告
[10]遺産分割協議書の作成
[11]預貯金及び有価証券の解約もしくは名義変更
[12]相続税申告書の作成
一連の遺産相続手続きは、全て死亡届提出から始まります。
多くの遺産相続手続きが、「死亡届提出から○○ヶ月まで」とされ、相続が発生したことを知ってからカウントされるため、期限が短いものからこなしてください。
それでは、下記よりそれぞれ詳しく解説します。
[1]死亡届提出
ただし実際には、火葬や葬儀を行うために死亡届の提出が必要になります。
葬儀告別式の後、一般的に火葬を行いますが、この時火葬場に提出する「火葬許可証」の発行には、医師から渡された死亡届の提出が必要になるためです。
●そのため死亡届は法的に7日以内の提出ですが、火葬許可証を得るため、現実的には1~2日以内に提出するケースがほとんどでしょう。
また死亡届の署名・捺印はご遺族(親族、同居人など)が届出人として行う必要がありまうが、死亡届の提出自体は第三者に依頼することも可能です。
現代ではほとんどが葬儀社に葬儀を依頼しますから、葬儀スタッフに死亡届の提出を託すと良いでしょう。
[2]公的年金や健康保険の手続き
2022年現在、故人が生前に日本年金機構にマイナンバー収録を済ませていや場合は、手続きも原則不要です。
けれども生前に未支給年金があれば、届出を行うと良いでしょう。
●各地方の公的年金事務所で、年金受給停止の手続きをします。
・国民年金…2週間以内(14日以内)
・厚生年金…10日以内
健康保険加入者、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している人は、2週間以内に、近くの役場で保険証を返納します。
[3]死亡保険金の手続き
故人(被保険者)が、生前に生命保険に加入していた場合、受取人は手続きを済ませ審査が通ることで、死亡保険金を受け取ります。
●生命保険など保険金は、保険法第95条により、基本的に権利発生時(故人が亡くなった日)の翌日から、3年以内です。
ただし3年を過ぎたからと言って、時効により絶対に保険金を受け取れないかと言うと、そうとも限りません。
保険法第95条では「時効の援用」と言うものがあり、保険会社等は時効成立前に保険金受取人に時効成立の意思表示をしなければなりませんが、事件性の高い案件など、特別な事情がない限り、一般的に保険会社から時効の援用がないためです。
・保険証券の確認
以上を確認し、保険会社に連絡する際には証券番号がわかるものを手元に置いておくことで、スムーズに対応してくれますよ。
[4]公共料金等の引き落とし口座の変更
金融機関が故人の死亡を確認すると、遺産分割協議が終了するまで、故人の口座は凍結されます。
この時に注意をしたい事柄が、故人の銀行口座で取り引きをしていた、公共料金の引き落としです。
故人の銀行口座が凍結される前に、公共料金等の引き落とし口座を変更もしくは、解約をしておきましょう。
●例えば、下記のような公共料金の引き落としがあります。
・インターネット
・スマートフォン
・電気
・ガス
・水道
故人がひとり暮らしだった場合には解約をし、同居家族がいる場合には、家族の銀行口座へ名義変更と口座変更を行いましょう。
口座変更する場合は、必ず各契約先に連絡する必要があるのでこちらも忘れないよう、注意をしてください。
パスポートと運転免許証の返納
ここで忘れがちなのが、パスポートと運転免許証の返納です。
公共料金の名義変更などの手続きとともに、済ませてしまうと良いでしょう。
①パスポートの返納…居住地の旅券販売所
・死亡が確認できる戸籍抄本など
・故人のパスポート
・届出人の身分証明書(運転免許証など)
②運転免許証の返納…警察署か運転免許センター
・故人の運転免許証
・死亡診断書
・故人の戸籍謄本
・届出人の身分証明書
・届人の認印
パスポートや運転免許証の返納は義務ではありません。
けれども手続きを取らないまま放置していると、身分証明書にもなる運転免許証やパスポートは、偽造などの詐欺被害に使われてしまうかもしれないため、返納しておくと安心です。
[5]相続人確定、戸籍謄本取得
相続人を確定するのには戸籍謄本取得などの手続きをこなす必要があります。
まず、相続人を確定するためには以下のことを調べなくてはなりません。
・亡くなった方の出産と死亡した日がわかる戸籍
・全員の相続人の現在戸籍
・子がいない場合の、故人の両親の出生から死亡までの戸籍
戸籍謄本の取得は、思ったよりも時間がかかりますので、早めに取り掛かると良いでしょう。
戸籍謄本の取得がスムーズに進めば問題ありません。
けれども多くの人々が、「書類を集める手続きが難しい…」と、次のステップに進めずに遺産相続手続きがストップしてしまいがちです。
亡くなったらすぐに戸籍謄本を取りに行き、困難な時には行政書士など、専門家への相談も視野に入れると良いでしょう。
[6]遺言書のあるなし
一連の遺産相続手続きでは、遺言書のあるなしで流れが大きく変わります。
そのため遺言書を故人が残しているかどうか、まず確認をしてください。
さらに遺言書には3つの種類があり、種類によっては家庭裁判所による検認を受ける必要があります。
●遺言書3つの種類と、家庭裁判所の検認の必要性
・自筆証書遺言…家庭裁判所による検認が必要
・公正証書遺言…検認の必要なし
・秘密証書遺言…家庭裁判所による検認が必要
自筆証書遺言は、故人(遺言者)が自筆で作成した遺言書で、一人で作成するものです。
けれども公正証書遺言は、故人(遺言者)が生前に公証役場で公証人に作成してもらい、2人の証人もいます。
秘密証書遺言では、その存在だけは証明されますが、内容は秘密にしているため、故人(遺言者)亡き後、その内容を確認して検認を行う遺言書です。
[7]相続財産の調査
家族が亡くなった後、まず行う遺産相続手続きは、相続財産の調査です。
故人が生前に財産目録を残している場合でも、財産目録自体が古い可能性もあるため、の内容が正しいか確認をします。
●預貯金財産など
・金融機関の預貯金の把握
・証券会社の運用
・保険契約など(お便り)
●不動産財産など
・権利書の確認
・固定資産税評判額の取得
・建物の特定
このよな遺産相続手続きにまつわる準備は、想像以上に手間暇が掛かります。
相続財産の全容を確認した後、相続人は相続の仕方(相続放棄/限定承認/単純承認)を決定しますが、相続放棄ができる期限(熟慮期間)は、相続発生を相続人が知った日から、3ヶ月以内です。
・【沖縄の終活】相続税が掛かる財産は預貯金だけ?課税対象になる財産
[8]相続放棄や限定承認、単純承認の選択
では遺産相続手続きで重要な決定時効となる、①相続放棄②限定承認③単純承認とは、どのようなものなのでしょうか。
①相続放棄
…プラス財産とマイナス財産、すべての遺産を一切相続しない
②限定承認
…相続で得たプラス財産の限度で、マイナス財産を相続する(引き継ぐ)
③単純承認
…プラス財産とマイナス財産、全ての権利義務を相続する(引き継ぐ)
マイナス財産は借金などの負債財産ですが、プラス財産でマイナス財産をカバーできるならば大きな問題にはなりません。
けれどもプラス財産がマイナス財産を上回る場合、相続人が単純承認を申請した場合、故人(被相続人)の借金などマイナス財産を引き継がなければならないため、先に財産調査が不可欠なのです。
[9]準確定申告
「準確定申告」は、故人(被相続人)が確定申告が必要だった場合に、相続人が故人の代わりに確定申告を行う遺産相続手続きです。
●故人(被相続人)が下記のようなケースで準確定申告を行います。
・家賃収入が発生する、不動産を所有していた
・事業主で、毎年確定申告を行っていた
・生命保険の満期金や一時金を受け取っていた
・給与を受け取る勤務先が、2箇所以上あった
・サラリーマンでも2,000万円以上の給与をもらっていた
…などなどのケースがあります。
また、必ずしも必要ではないものの、準確定申告を済ませた方が良いケースは下記です。
・源泉徴収を多く納めている(年末調整をしていない)
・医療費が高額だった
・配偶者控除、扶養控除、寄付金控除を受ける場合
…以上のようなケースでは、準確定申告を行うことで故人亡き後でも還付金を受け取る可能性があります。
・【沖縄の不動産相続】準確定申告とは?相続後に確定申告3つの事例
[10]遺産分割協議書の作成
遺書がない場合、財産調査や相続人調査が終わり、遺産相続の全容が把握できたら、遺産分割協議書の作成です。
●遺産分割協議書の作成は、主に下記の要領で進みます。
・相続人全員の相続分を明瞭に記載する
・相続人の人数分を作成し、相続人それぞれが保管する
・相続人が自筆署名をする(全員)
・相続人が実印を捺印する(全員)
ここで重要な事柄は、「相続人全員が署名・捺印をする」ことです。
例えば、相続人の一人と面識がなく、連絡が取れないトラブルや、相続人同士が納得できる遺産分割ができないなどで、放置されるケースも少なくはありません。
けれども遺産分割協議が完了しなければ、その後の遺産分割手続きは進まず、不動産財産などは「未分割財産」として放置されたまま、などの事態に陥ります。
・遺産分割まとまらないまま未了!そのまま放置したら起きる、3つのトラブル
[11]預貯金及び有価証券の解約もしくは名義変更
遺産分割協議書の作成が終わり、相続人全員のハンコや著名が終わったら、次に預貯金及び有価証券の解約、もしくは名義変更をします。
●下記の財産に関して、解約や名義変更手続きが必要です。
・過去に取引があった銀行
・有価証券会社
※この際、相続人全員の著名と捺印(判子)は必須になるため、予め相続人の方には了承を得ておきましょう。
また故人が取引金融が多かった場合は、その分解約手続きとともに、手間と時間がかかるため、ある程度時間の確保もしておきます。
[12]相続税申告書の作成
相続財産が一定の額を超えるようであれば、相続税の申告書を作成しなければなりません。
●相続税申告書は、相続を開始してから10ヶ月以内に行うことが条件です。
…そのため、相続財産の調査などは早めに行い、相続税申告の10ヶ月までに一連の遺産相続手続きを済ませてしまうとスムーズになります。
ただし、葬儀や法要などさまざまなやるべき事柄が乱立するなか、故人が亡くなってから10ヶ月はあっという間に過ぎてしまいがちです。
「何事も早めに取り組む」「無理をせず依頼できる作業は周囲に振る」ことを、より強く意識して、遺産相続手続きを進めると良いでしょう。
最後に
このように遺産相続手続きは、死亡届の提出から、多数のやるべき事柄が乱立しますが、それぞれ期限ごとにひとつひとつをこなし提出していくと、スケジュールをこなしやすいです。
けれども日常生活と遺産相続手続きの両立は、思いの外大変ですよね。
一人で負担を抱え込むような時には、無理をせず、弁護士や行政書士に一連の手続きを依頼すると良いでしょう。
最初の相談料(約5千円/30分が目安)や、着手金(約20万円以上が目安)などがありますが、報酬金額は依頼により得た利益から計算して算出される場合が多いです。
まずは相談してみるのも、良いのかもしれません。
まとめ
遺産相続1年以内に行う12の手続き
[1]死亡届提出
[2]公的年金や健康保険の手続き
[3]死亡保険金の手続き
[4]公共料金等の引き落とし口座の変更
[5]相続人確定、戸籍謄本取得
[6]遺言書の有り無し
[7]相続財産の調査
[8]相続放棄や限定承認、単純承認の選択
[9]準確定申告
[10]遺産分割協議書の作成
[11]預貯金及び有価証券の解約もしくは名義変更
[12]相続税申告書の作成