【沖縄特有の相続問題】トートーメー継承トラブルと解決事例

2021/12/24

【沖縄特有の相続問題】トートーメー継承トラブルと解決事例
沖縄特有の相続トラブルとしてトートーメー継承に伴う問題は今も数多くありますよね。

「トートーメー」は位牌を差しますが、沖縄では「イフェー(位牌)」の言葉もあるように、「尊い(トートー)君(メー)」は檀家制度を持たない沖縄独自の祖霊信仰のシンボルでもあり、位牌に宿るご先祖様の魂も含めた言葉です。

沖縄では相続トラブル以前に「トートーメー継承問題」とも言われるほど、祭祀財産(位牌やお墓)継承も問題視されてきました。これが沖縄では相続トラブルにも繋がる事例が多いのです。

今回はトートーメー継承問題がなぜ、沖縄で相続トラブルへ発展するのか…、その理由とともに過去ケースから見た、いくつかの解決策をお伝えします。どうぞ参考にしてください。
 

【沖縄特有の相続問題】
トートーメー継承トラブルと解決事例

 

 

沖縄のトートーメー継承問題

沖縄のトートーメー継承問題
沖縄で相続トラブル以上に深刻化しているのが、トートーメー継承問題です。トートーメーは先祖代々が宿る位牌で、本州で言うところの繰り出し位牌(複数のご先祖様の位牌札を収納したもの)に近いのではないでしょうか。

檀家制度が広がらずに独自の信仰を持つ沖縄では、ヒヌカン(火の神)信仰、御嶽(うたき)信仰とともに、祖霊信仰が大きく人々に根付いています。

そんな沖縄の人々の信仰を一心に受けるトートーメーの継承問題が深刻化するのには、現代の暮らしに合わない数多くのトートーメータブーがあるためです。

【 沖縄特有の相続問題☆トートーメータブーとは 】

● 沖縄では父方の血族「門中」が強い絆を持っていますが、トートーメーを継承できるのは「父方血族の嫡男」のみとされ、4つのトートーメータブーが信じられてきました。

・チャッシウシクミ(嫡子押し込み)→トートーメーを継承するのは嫡男(長男)でなければならず、継承者を残さず亡くなった長男でも位牌に祀るとされ、次男以降の継承は嫌がられてきました。

・タチーマジクイ(他系混ぜ込み)→父方の血族であることが重要とされ、例えば養子や連れ子でも父方の血を引いていない継承者はタブー視されています。

・イナグァンス(女元祖)女性の継承は認められていませんでした。娘しかいない家庭では、叔父さん(一代上の次男以降)の次男・三男に引き継ぎます。

・チョーデーカサバイ(兄弟重なり)→長男と他の兄弟(次男など)の位牌を並べて祀ることはタブーです。次男以降が独身のまま亡くなった場合、「脇位牌」としてトートーメーの脇に祀られます。

※ トートーメータブーを破るとそのフソク(不足)を知らせるため、子孫代々に渡り「シラシ(お知らせ)」として不幸が訪れると信じられてきました。

このようにして代々嫡男にトートーメー継承が行われてきたのですが、この習わしが本家・分家意識をより顕著にし、沖縄特有の相続トラブルへと繋がります。

そもそも琉球王朝から続く家(ヤー)を守るための習わしですから、現代の暮らしには合っていない側面が大きいです。
 

トートーメー継承が沖縄で相続トラブルに繋がる理由

トートーメー継承が沖縄で相続トラブルに繋がる理由
このトートーメー継承問題が沖縄の相続トラブルへ繋がる所以は、ひとつにトートーメー継承に伴い、本家と分家意識がより顕著になること、そしてトートーメー継承に伴う経済的・労力的負担に相応する財産分割を長男が求める傾向にあるためです。

【 トートーメー継承が沖縄で相続トラブルに発展する理由 】

● 昔ながらの考え方では「トートーメー継承=家督を継ぐ」意味合いがあります。

→ 家督を継ぐと言うことは遺産を全て受け継ぐことになりますが、現代の民法では遺留分を請求する権利があり、相続人全ての同意がなければ長男に家財全てを相続する権利はありません。

※ ただ、よくこのような沖縄の相続トラブルでは「長男が譲歩すれば良い」と長男を批判する傾向もありますが、トートーメー継承は負担が大きいのも確かです。

生前に被相続人の介護をしてきた相続人に対して寄与分があるように(これも労力に対して相応ではないとトラブルになりがちですが)、トートーメー継承に伴う沖縄の相続トラブルでは長男側の立場にも立ち、皆で解決策を見出すと良いでしょう。
 

トートーメー継承者の負担

トートーメー継承者の負担
ではトートーメーを継承した長男にとって、どのような負担があるのでしょうか。

全国的に祭祀財産は相続税も掛からず分割対象にならないため、それほど問題にはなりません。その背景には檀家制度が根付いているため、継承しても維持管理に沖縄ほどの労力や経済的負担が掛かりにくいこともあるでしょう。

ちなみに現代では無宗教として檀家を持たない家庭もありますが、その場合は維持管理を請け負ってくれる民間霊園にお墓を建てているケースがほとんどです。

一方で昔ながらの沖縄では私有地に建てる「個人墓地」が主流でした。沖縄ではトートーメーを継承すると言うことは、お墓も受け継ぐことを差します。

【 トートーメー継承による長男の負担 】

(1) 個人墓地の管理 → 霊園とは違い個人の土地に建つお墓ですから、(特に沖縄は草木が伸びやすいため)定期的な清掃と管理が不可欠です。労力も掛かりますし、業者に依頼するとしてもコストが掛かります。

(2) 祭祀行事の主催 → 祖霊信仰が根付く沖縄では旧暦行事は大切に扱われてきました。親族一同が集まるお墓参り行事「シーミー」や旧盆など、トートーメーを継承した家は宗家としてお供え物や振る舞いの準備をしなければなりません。

(3) トートーメータブー → 地域や家(門中)によっても異なりますが、トートーメーのさまざまなタブーは大きな負担です。なかでも「トートーメーを家から出してはいけない」など、継承した家族は移住するなど暮らしの自由が阻まれる可能性があります。

このように決して家督を継ぐ(財産を相続する)ことが必ずしも嬉しくはない現代では、トートーメー継承は大きな負担に感じて避ける人々は多い傾向です。

これだけの負担を負いながら、現代の民法では祭祀財産は分割協議に全く影響しません。そこまで考慮しながら長男の負担を鑑みると、長男の主張もある程度理解できるのではないでしょうか。
 

トートーメー継承に伴う沖縄相続トラブルの解消案

トートーメー継承に伴う沖縄相続トラブルの解消案
そもそもの本家・分家意識の強弱もありますが、長男がトートーメー継承によって沖縄での相続に不満を募らせていた場合、兄弟でこの問題を共有して解決策を見出すことで、トラブル解消の糸口は見られます。

そこで近年多いトートーメー継承に伴う沖縄の相続トラブルへの解消案が、「トートーメー(やお墓)の永代供養」です。

【 沖縄特有の相続問題☆トートーメーの永代供養 】

● 今も沖縄には個人墓地に建つお墓が多数を占めていますが、現在では民間霊園も増えてきました。民間霊園では位牌やお墓を閉める「閉眼供養」をして、永代供養を行うサービスも見受けます。

→ 永代供養は「永代に渡り供養をする」サービスです。個人に代わり民間霊園が永代墓などで永代供養を請け負ってくれるため、個人に大きな負担はありません

お墓にも位牌にも永代供養サービスはあるため、沖縄では相続トラブルをきっかけに後々の子や孫まで継承問題に苦しむことのないよう、永代供養を選ぶケースが増えています。

継承した長男に決断から労力・コストまで全てを任せるのではなく、兄弟(相続人)全員で話し合い、決定してコストも出し合い進めていくのが、沖縄で相続トラブルを気持ちよく解消するポイントです。
 

いかがでしたでしょうか、今回はトートーメー継承問題に伴う沖縄の相続トラブルについてお伝えしました。

トートーメー継承をした長男が家督を継ぐとして、沖縄で遺産全てを相続しようとしたケースでは、他の相続人(兄弟)が長男を悪者と捉える傾向にありますが、長男の負担まで考慮することが後々まで悔恨の残らないトラブル解消の糸口です。

ただ全国的には本家と分家意識は薄れていますが、トートーメーのために沖縄ではより本家意識が強い家もあるかもしれません。この場合は法的に解消する事例も多いです。

ただ築年数が古くなり空き家も増える現代において、「トートーメーを家から出してはならない」タブーは、沖縄の不動産相続においても深刻化する問題ですので、これを機会にそもそものタブーを見直すため、話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
 

 
まとめ

トートーメー継承に伴う沖縄の相続トラブル
・トートーメー(位牌)は嫡男が引き継ぐ
・トートーメー継承=家督を継ぐとの考え方
・現代の民法では、遺留分の請求権がある
・家督を引き継ぐ(遺産全てを相続)には相続人全員の同意が必要
・トラブルになった場合は長男が譲歩する解決策が多い
・トートーメー継承には経済的・労力的負担が大きい
・相続人(継承者)全員でトートーメー問題を検討する
・解決策としてトートーメー(やお墓)の永代供養が増えている
・長男に任せるのではなく相続人全員で永代供養を進める

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