・離婚前に別居をすると良いケースとは?
・離婚前の別居期間は、平均的にどれくらい?
・離婚前に別居する、メリット・デメリットは?
離婚は夫婦双方が同意をして成立するため、離婚請求から成立まで、時間が掛かることも多いです。
ただ離婚同様、別居も経済面や環境面など、さまざまな側面からハードルは高いでしょう。
本記事を読むことで、自分のケースでは離婚前に別居した方が良いのかや、予め理解しておきたい、離婚前の別居期間、別居にあたり注意点をお伝えします。
離婚前に別居をするケースとは?
◇離婚前に別居をする夫婦はモラハラやDVの他、「離婚が成立しない」ケースです
離婚前の別居を勧める夫婦は、モラハラやDVを受けているケースですが、その他にも性格の不一致など、「離婚にあたり特別な理由がなく、離婚が成立しない」夫婦もいます。
<離婚前に別居をするケース> | ||
[ケース] | [目的] | [タイミング] |
・モラハラやDV | 安全を確保する | 離婚を切り出す前 |
・子どもの虐待 | 安全を確保する | 離婚を切り出す前 |
・離婚の合意がない | 離婚の成立 | 離婚を提案した後 |
以上のようにモラハラやDVと、離婚が成立しないケースでは、そもそも別居の目的が大きく異なるでしょう。
モラハラやDVにより、離婚前に別居をするケースでは、同居中に離婚を切り出すことでどのような被害を受けるか分かりません。離婚を切り出すのは、離婚前に別居をして、自分や子どもの身の安全を確保した後のタイミングです。
別居後、離婚する・復縁する確率は?
◇別居後、1年未満で離婚した確率は82.5%です
平成20年度、厚生労働省が発表した「同居をやめたときから届出までの期間別にみた離婚」によると、別居後に1年を満たずに離婚に至った夫婦は、30代が最も多い結果でした。
続いて20代と、離婚が別居開始から間もない世代は若い世代に集中しています。一方で離婚前の別居生活が長くなる世代は50代です。
・別居後、復縁した確率…約40%
離婚を見据えた別居の後、復縁した夫婦に多い傾向は、別居期間が短い点でしょう。早い期間で3ヶ月、1年未満で復縁を果たしています。
離婚が認められず別居するのはなぜ?
◇離婚は夫婦が合意を経て成立します
一方で夫婦の一方が離婚に合意しない限り離婚は成立しないため、夫婦間の話し合い「離婚調停」がまとまらなかった場合、家庭裁判に発展します。
・離婚の合意が得られない
・離婚調停がまとまらない
・家庭裁判で離婚が認められない
・離婚前に別居を開始
・一定年数の別居事実を作る
・家庭裁判で離婚が認められる
一方が離婚に合意しない場合、家庭裁判に発展しますが、民法では相応の離婚理由として、5つの「法定離婚事由」のいずれかに該当しなければ、離婚の成立が難しいのです。
・離婚裁判とは?離婚ができない時は?離婚訴訟5つの法定離婚事由とは
法的に離婚が成立する別居期間は?
◇一般的には約3年~5年で、離婚が成立します
離婚を見据えて長期的に別居をすることで、離婚が成立する重要なファクターとなる「婚姻関係の破綻」が事実関係として認められます。
婚姻関係の破綻は、前述した5つの法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断される傾向にあります。
法的に離婚前の別居期間が長引く要因は?
◇これと言った決定的な離婚理由がない場合、別居期間は長引く傾向です
相手が合意せず離婚ができないケースに多い理由は「性格の不一致」などで、決定的な離婚理由がありません。
この状態から離婚前の別居により、「婚姻関係の破綻」を成立させるには、相応の期間が必要になるケースが多いです。
●離婚成立まで別居期間が5年以上掛かったケース
・決定的な離婚理由がない
・有責配偶者が離婚を求めている
・有責配偶者であり、夫婦の子どもがいる
「有責配偶者」とは、離婚原因が自分にある方です。
夫婦関係の破綻原因がありながら、さらに離婚を求めることは、原則として認められないためです。
さらに優勢配偶者が請求する離婚により、相手の離婚後の生活が困難になることが明白である場合や、夫婦の子どもが成人していない場合も、離婚の成立は長引くでしょう。
離婚前に別居をするメリットは?
◇離婚前に別居をすることで、離婚が法的に成立する可能性があります
離婚前に別居をするメリットはさまざまです。
離婚は決まっているものの、夫婦関係が悪くない状況であれば、離婚成立まで同居する夫婦もいます。
生活にストレスが掛かる場合、離婚成立前から別居を始める夫婦も多くいるでしょう。
・同居を続けるストレスがない
・離婚準備を進めやすい
・離婚の意思を相手に示す
・離婚が早まる可能性
・法的に離婚が成立する可能性
また深刻なモラハラやDV、子の虐待が絡んだ場合は、一刻も早く離婚前の別居に踏み切るべきです。
離婚を先に切り出して興奮させないよう、離婚前に先に別居をしながら、安全な環境で離婚を進めます。現代では相談することで、シェルターを提供してくれる自治体もあるでしょう。
離婚前に別居をするデメリットは?
◇離婚前の別居は復縁が難しくなる傾向で、離婚を有利に進める対策が必要です
離婚前に別居をする場合、復縁はより難しくなることを理解してから決めた方が良いでしょう。別居が長引くことで、寂しさにも慣れて自由度が増す他、浮気の可能性も高くなります。
・復縁が難しくなる
・離婚を有利に進める対策が必要
・別居時の生活費の確保
離婚を前提としない別居であれば、期間を短く設定すること、別居した後も、寂しくなれば戻れるよう、居場所を整えておく配慮などがポイントです。
離婚前に別居をする注意点は?
◇離婚を前提として別居をするならば、家を出る前の注意点が5つあります
一方、確実に離婚が進むよう別居を決めたならば、離婚後や別居中の生活に困らないよう、有利に離婚が進む対策が必要です。
離婚を見据えた別居は、約3年~5年後に相手が離婚に同意しない場合、離婚調停・もしくは離婚裁判で条件を協議しなければなりません。
離婚前でも証拠は確保して別居する
◇相手が離婚原因となる「有責配偶者」の場合、家を出る前に証拠を抑えます
離婚前の別居により家を出てしまうと、その間に浮気やDVなどの証拠を隠滅される可能性が高いためです。
また別居をしてしまうと、離婚に向けた証拠集めもより難しくなるでしょう。
・離婚を有利に進める証拠集めとは。浮気やモラハラ、パターン別に解説!
離婚前の別居を強行すると不利になる
離婚前に夫婦の同意なく別居を強行すると、有責配偶者として不利になる可能性があります。
有責配偶者と認定されてしまうと、離婚が成立しない可能性が高まるばかりか、相手から慰謝料を請求されたら対応しなければなりません。
離婚前の別居中、生活費を確保する
◇離婚前の別居では、収入の少ない方の配偶者が婚姻費用を請求できます
「婚姻費用」とは、夫婦間で収入の少ない方が、多い方の配偶者へ請求できる生活費です。
●婚姻費用の相場は、相手と自分の収入に応じて約4万円~15万円です。
・児童手当
・児童扶養手当
対して、離婚後の子どもの生活費は「養育費」となりますが、養育費には配偶者の生活費が含まれません。
また離婚を見据えた別居の場合、別居中に職探しも進めておくと良いでしょう。
相手の財産を把握しておく
◇離婚を見据えた別居の場合、後に行う財産分与まで考慮し対策します
離婚を見据えた別居では、家を出た後に配偶者が財産隠しをするケースも少なくありません。
家を出る前に配偶者の経済状況や共有財産を確認します。
・配偶者の収入状況(源泉徴収票・給与明細・確定申告など)
ただし離婚前の別居であっても、相手名義のものは持ち出さないよう注意が必要です。書類を確認したら、控えをコピーして証拠を確保しておきます。
離婚成立前の別居は、浮気をしない
◇離婚前でも別居中の浮気は慰謝料請求リスクが高いです
例え離婚を見据えた別居で3年以上経っていたとしても、戸籍上夫婦であることには変わりません。
家庭裁判所で婚姻関係の破綻が認められた場合、不貞行為とは見なされないケースもありますが、「別居=婚姻関係の破綻」ではありません。
離婚前の別居は、目的を意識して進めましょう
離婚を見据えた別居が役立つのは、モラハラやDV、虐待など、身の安全を確保するケースと、夫婦の同意がなく離婚が成立しないケースの2パターンです。
この他の離婚前の別居では、落ち着いて考える時間を持つこと、冷静に離婚を進めることが目的となります。
特に離婚の覚悟がないまま別居に至った夫婦では、将来的に別居を解消し復縁する可能性もあるかまで、視野に入れる必要があるでしょう。
本記事を参考にしながら、それぞれ離婚前の別居目的に見合った、適切な対策を進めてみてはいかがでしょうか。