形見分けとは、故人が生前に使用していた思い出深い品々を家族や親族、故人と近しい知人友人などで分けることを差します。
財産を分ける遺産相続と、思い出の品を分ける形見分けでは、もめる理由や傾向、対策も違いますよね。
・形見分けとは?
・形見分けのマナーは?
・実は形見分けでもめやすいって本当?
今回は、意外に多い形見分けでもめやすい理由や、遺産相続とは違う3つの特徴を、形見分けでもめない3つのポイントとともにお伝えします。
形見分けとは?
●故人が生前に使用していた品物を、家族や親族・友人などで分けることです
形見分けは生前の故人が愛用していた、思い出深い品々を家族や親族、友人などで分けることで、地域によっては「しょうぶ分け」「すそ分け」「そで分け」などとも言われます。
●「形見」とは故人の思い出の品
・着物
・アクセサリー
・小物類
・家具
・万年筆
・時計
・その他日用品
ただ故人が生前に使用していたものなら何でも…、と言う訳ではありません。
布団や古い衣服などは、燃えるゴミなどに分別して捨てることが多いでしょう。
「形見」の由来は?
●「形見」とは、故人その人の形が見えるような、思い出深い品です
そのため故人が家に残したさまざまな品々のなかでも、取り分け故人の「形(その人の姿)」が「見える(偲ばれる・思い起こさせる)」ような、遺品を形見と言います。
昔は「片見(かたみ)」とも言われ、親友がひとつの品を半分ずつ持つ習慣があったため、「形見分け」の習慣が産まれたともされてきました。
形見分けのマナーとは?
●形見分けの基本は、目上から目下へ包装せずに贈ります
目上の人へ形見分けをするならば、本人から希望があった場合のみです。
郵送するならば事前に先方に電話をして、形見分けを希望するか、受け取ってもらえるかを確認します。
(1)包装しない
・半紙などで包む
(2)表書き
・仏教…「遺品」
・神道…「偲び草」
マナー上での形見分けのタイミングは、四十九日法要(神道では五十日祭・三十日祭)の忌明け後です。
形見分けに限らず香典返しなど、忌中に喪家から贈り物をすることは忌まれています。
もめる形見分け3つの特徴
●形見分けでもめるケースの特徴は、金銭トラブルではなく、愛情トラブルです
相続のもめ事の多くは相続財産(遺産)を平等に分けられていないなど「金銭の取り合い」ですが、形見分けはいわば「愛情の取り合い」と表現できます。
●姉妹でのトラブルが多い
…着物/帯締めの形見分けに多く見られる
・周囲からは理解しにくい
・一度もめると一筋縄ではいかない
※周囲が思う以上に、険悪になる事例が多い
なぜなら形見分けとは、相続財産(遺産)には入らない品だからです。
何百万とする高級時計や宝石、高級な貴金属は、相続財産(遺産)の対象として分けられます。
形見分けでもめた事例
●母親が亡くなり、娘2人で形見分けをしたところ、同居をしていた姉が母親の着物を全部持っていた
形見分けでもめる事例は姉妹間が多く、特に着物や帯締めが多い印象です。
母親が亡くなり娘2人で形見分けをした姉妹は、相続財産(遺産)約1億2千万、約8千万円の不動産と約4千万円の預貯金財産がありました。
けれども相続財産(遺産)は円満に遺産分割協議が完了し分けられ、その後の数十万円の着物3着と帯締め3本で、大もめしたのです。
●独身で長年母親と同居をしていた姉が、母親の生前に結婚し、家を出る際に母親の着物を全て、一緒に持って行っていました。
形見分けにより妹がその事実を知り、カンカンに怒ってトラブルが起き、現在にもしこりを残しています。
財産的価値から見ると相続財産(遺産)と比べて微々たるものですが、これは「母親の愛情」「思い出」の価値として、姉妹にとって重要なものでした。
では兄弟ではもめないのか?
●男兄弟の場合、相続をきっかけに形見分けではなく、過去の両親の対応を巡ってもめるケースを多く見受けます
形見分けが姉妹間のトラブルに発展しやすいのに対して、兄弟間では形見ではなく、相続財産(遺産)を分ける遺産分割協議において、過去の両親の対応から愛情の奪い合いになるケースが多いです。
例えば「俺は公立しか許されなかったのに、弟は私立だった!」などがあります。
●相続をきっかけとした兄弟間のトラブル事例です。
(1)学校の違い
・私立と公立
・浪人を許された/許されない
(2)結婚式の違い
・結婚式の規模
…などなど、「兄貴は180人の来賓を迎えた結婚式だったのに、弟の俺は30人くらいの小さな結婚式だった!」など、過去の出来事をぶり返すケースは多くあります。
形見分けでもめないポイント
●形見分けでは、兄弟姉妹がお互いに「見えやすく」平等に分ける
前述した着物3着と帯締め3本の形見分けでもめた姉妹のケースでは、母親が亡くなるまで、姉が全て持って出ていたことを、妹が知らなかったことが原因です。
(1)遺産分割協議の後に行う
(2)勝手に持ち出さない
(3)形見を分ける人/選ぶ人を分ける
姉としては「言うまでもない」ことでしたが、妹としてはそうは行かなかったのでしょう。
(1)遺産分割協議の後に行う
意外に思えますが形見分けでもめる原因は「愛情の取り合い」ですので、「金銭の取り合い」である相続トラブルよりも、根が深くなりがちです。
●また形見分けは、本人同士も予想外に起きるトラブルでもあります
そのため先に、より感情が入らず冷静に対処できる相続財産(遺産)を遺産分割協議で分け、10ヶ月以内に完了させてしまうと良いでしょう。
(2)勝手に持ち出さない
●例え、両親が生前に言っていたとしても、兄弟姉妹に伝えることなく勝手に持ち出すことは避けます
子どもの頃は家族が常に一緒に暮らしていますが、大人になると両親とそれぞれの子どもが別々に会いがちです。そこで「自分抜きで」決められたこと、そのものに反発する兄弟姉妹も少なくありません。
(3)形見を分ける人/選ぶ人を分ける
お互いが見えやすく平等に形見分けをするために、それぞれが役割分担をして形見分けを担うと良いでしょう。例えば、下記のような方法です。
・姉…形見を分ける
・妹…形見を選ぶ
それぞれが役割を担い決めているので、お互いに納得しやすく形見分けがスムーズに進みやすい方法となります。
形見分けをいただいたら
●形見分けをいただいたら、カビや雑菌から守りながら保管します
形見分けの品はほとんど使用することもありません。そのためカビや雑菌の繁殖を防ぐよう、シリカゲルなど乾燥剤を入れた密閉できる箱に保管する人が多いです。
(1)保管する
・乾燥剤とともに密閉
・通気の良い冷暗所に保管
(2)いらない場合
・寺院や神社のお焚き上げなどで処分
・燃えるゴミなど分別して処分
乾燥剤や充分な密閉環境のなかった昔は、通気性の良い和紙などに包み、湿気が少ない冷暗所などに保管しました。
いらない場合は形見であっても法律上は物なので、分別してゴミに出せば良いのですが、「故人の日記はどう処分しますか?」などの質問もあります。
気になる場合には、寺院や神社のお焚き上げをお願いすると良いでしょう。
形見が指輪だったら?
●形見が指輪など貴金属でしたら、そのまま保管しても良いですし、手元に置きやすいよう、リフォームする人もいます
配偶者などの指輪を形見分けした場合、自分の指に合うようリサイズなどのリフォームをしていつも一緒に持ち運ぶ人も少なくありません。
・リサイズして付けて暮らす
・宝石を残してリフォーム
・地金を使って、大幅でデザインリフォーム
奥様を亡くした旦那様が、自分の薬指に合わせてリサイズし、結婚指輪を二連で付けるケースは少なくありません。
また、娘が母親の指輪を形見分けしたケースでは、現代に合うデザインに変えた事例もあります。
形見が宝石だったら?
●価値ある宝石は相続財産として扱われます
形見分けをする前に宝石が価値あるものだった場合、相続財産として相続人同士で分け合う遺産分割協議に掛けられるでしょう。
そのうえで宝石の形見分けを受け売却を検討する場合、下記の方法があります。
●遺品整理業者に依頼する
・リサイクルショップ
・宝石専門の買い取り業者
・ネットオークション
一見して宝石が相続財産として価値があるか、アクセサリーとして形見分けの対象となるかが分からないことも多いです。
そこで一般的には遺品整理業者に一括して依頼する人が多いでしょう。
最後に
以上が形見分けとは、形見分けが意外にもめやすい3つの特徴と、もめない形見分け3つのポイントです。
配偶者が亡くなり両親いずれかが残っている一次相続では、形見分けによるトラブルはあまり起こりません。そもそも残された親が形見を采配するためです。
けれども二次相続では一家のバランスを取る両親が亡くなり、家族・兄弟姉妹間のバランス自体も不安定になりがちななか、遺産分割や形見分けをしなければなりません。
大人になると関係性が薄れがちな兄弟姉妹ですが、もめない形見分けのためにも、日ごろからコミュニケーションを取ることを意識してみてはいかがでしょうか。
・【沖縄の家督相続】本家・分家意識とは?もめる・もめない違いは?
まとめ
形見分けとは?もめない3つのポイント
●形見分けとは
・故人の思い出の品を分けること
・形(故人の姿)が見える(思い起こす)品●形見分けのマナー
・目上から目下へ分ける
・包装せず、半紙などで包む<表書き>
・仏教…遺品
・神道…偲び草●形見分けでもめる3つの特徴
・姉妹でのトラブルが多い
・周囲からは理解しにくい
・一度もめると一筋縄ではいかない●もめない形見分け3つのポイント
・遺産分割協議の後に行う
・勝手に持ち出さない
・形見を分ける人/選ぶ人を分ける●形見をいただいたら
<保管する>
・乾燥剤とともに密閉
・通気の良い冷暗所に保管<いらない場合>
・寺院や神社のお焚き上げなどで処分
・燃えるゴミなど分別して処分