配偶者居住権とは?利用したい人と、3つのメリット・デメリットを解説
2022/10/28
「配偶者居住権」とは、配偶者の方が亡くなって、もう1人の生存配偶者が、現在住んでいる家に、引き続き住む権利を差します。
この「配偶者居住権」は、配偶者がいる第一次相続の時に役立つ権利です。
相続する際に相続税を払うことにはなりますが、相続税が高すぎて払えないがために、「やむを得ず、自宅を売却しなくてはならない!」なんことを防ぐ役割があります。
今回は、配偶者居住権のメリットやデメリット、どのような人が配偶者居住権を利用すると良いのか、を解説します。
「配偶者居住権」とは?
例えば子ども達が巣立った後、シニア夫婦が二人暮らしをしている世帯で、夫が亡くなり、妻が残されたとします。
夫が名義人だった場合、妻は現在も住み続けている家を被相続人から相続することで、相続税が発生するでしょう。
けれども相続税が支払えない場合に、配偶者居住権がなければ、長年住み続けてきた家を売却して、相続税の支払いに充てなければなりません。
このような問題に対応できる制度が、「配偶者居住権」です。
配偶者居住権は、使用権
ここで配偶者居住権のポイントは、「使用権である」という点でしょう。
例えば、遺産分割で住んでいる家が息子の相続になる場合でも、配偶者居住権を行使することで、息子はむやみにその家を売却することはできません。
この場合①息子=所有者ではありますが、②妻(配偶者)=居住する者であり、たとえ所有者であっても、その財産の侵害はできないためです。
配偶者居住権のメリット
では、この配偶者居住権のメリットを見ていきましょう。
配偶者居住権を利用するメリットは、主に以下の3点です。
(1)現在住んでいる家に住み続けることができる
(2)老後の生活資金を確保できる
(3)配偶者が代償金を払うリスクが軽減される
それぞれ解説します。
(1)現在住んでいる家に住み続けることができる
夫婦で同居している世帯で、残された配偶者が安心して、今後も現在住んでいる家に住み続けるために、配偶者居住権はあります。
一般的に、配偶者と被相続人(故人)が一緒に暮らしている世帯がほとんどですよね。
この時、被相続人(故人)が亡くなったとしても、今現在住んでいる住みやすい家を手放す選択は、あまりないのではないでしょうか。
(2)老後の生活資金を確保できる
ただし配偶者居住権以外にも、現在の家に住み続けることはできます。
それが遺産分割を活用した方法です。
ただ遺産分割により現在の自宅を相続した場合、老後の生活を確保できないケースが多々あります。
●遺産分割で自宅を相続すると、自宅の評価額によっては、
・他の相続人へ相当額の分配が必要になる
・相続税が払えない
…など、結果的に自宅を売却しなければ、相続が成立できない状況が起こり得るためです。
大変なケースでは老後資金を確保さえできなくなるケースもあります。
(3)配偶者が代償金を払うリスクが軽減される
この代償金をを払うというケースについてですが、安価なものではないので老後資金が枯渇してしまう恐れがあるのです。
そのため、配偶者居住権を利用すれば、ご自宅の所有権を相続した際に比べて評価額が抑えられるので、配偶者の代償金を支払うというケースが軽減されることでしょう。
配偶者居住権のデメリット
以上が配偶者居住権を利用するメリットですが、必ずしも全ての配偶者が、配偶者居住権を利用する選択が良い訳ではありません。
そこで配偶者居住権のデメリットまで理解して、利用の有無を検討すると良いでしょう。
配偶者居住権を利用するデメリットは、下記2点です。
(1)自宅の売却は不可
(2)必要経費がある
配偶者居住権の利用により、住み慣れた家に住み続ける保証を受けることができますが、今まで夫婦二人暮らしだった家に、一人で住むには不自由もあります。
遺産分割のために自宅を売却し現金化できない場合、生活面での不安を抱える相談もあるため、下記の解説を確認してから、配偶者居住権利用の有無を決めてください。
(1)自宅の売却は不可
配偶者居住権を利用すると、住んでいる家について、下記2点ができなくなります。
・担保として設定すること
もちろん、配偶者居住権を利用する時には、現在住んでいる家に住み続けるというのが前提ですよね。
しかしながら病気や怪我、老後の暮らしが不自由になったなどで、施設に行くことになるケースも多々あります。
このような場合に、配偶者居住権を行使していない自宅では、家を売却して老後の資金や病気や怪我の治療代、施設代に回すことが可能です。
けれども配偶者居住権を行使している自宅の場合、その自宅を売却することも、自宅を担保としてお金を借りることもできない事態になります。
(2)必要経費がある
そのため配偶者居住権を利用して、住み慣れた自宅に住み続けた場合、当然固定資産税が毎年掛かります。
例えば、配偶者が亡くなった後、配偶者居住権を利用しない場合には、相続を放棄する選択肢もあるでしょう。
このように今まで住んできた家を出て賃貸に住んでいるならば、固定資産税は掛かりません。
けれども配偶者居住権を利用して自宅に住み続けることにより、自宅の固定資産税が掛かり、老後の生活費に負担が掛かります。
配偶者居住権はどんな人が利用する?
次に、配偶者居住権はどんな人が利用するのでしょうか。
ここまで解説した、配偶者居住権を利用するメリットとデメリットを踏まえると、下記のような人々に役立ちます。
(1)ご自宅の評価額が高額な場合
(2)再婚した妻の家系ではなく、子どもに自宅を相続させたい
(3)配偶者と子ども達が疎遠
下記より、それぞれ解説しますので、自分の状況に重なる部分があるかどうか、確認をしながら読み進めてください。
(1)ご自宅の評価額が高額な場合
現在住んでいる家の評価額が高額な場合は、ご自宅の評価を法的評価額を上回ってしまうので、配偶者が自宅を相続するために、代償金を支払わなくてはいけません。
このように代償金を支払うことで老後資金が底をつくケースもあるので、今後の将来を考えて配偶者居住権を選ぶ人もいます。
(2)再婚した妻の家系ではなく、子どもに自宅を相続させたい
子どもがいる高齢者が再婚した場合に、配偶者居住権を使用した方が良い例もあります。
これを阻止するために、配偶者居住権を行使します。
つまり自分の子どもではなく、再婚相手に相続権が委ねられる状況を避けるため、自分の子供に自宅を相続させたい場合に有効です。
(3)配偶者と子ども達が疎遠
被相続人が遺書なしに亡くなった場合、被相続人の遺産は遺産分割によって話し合いで可決します。
配偶者と子どもと交流があり、関係が円満であるなら、配偶者が法定相続分が上回ることがあっても円滑に対処してくれるでしょう。
しかし配偶者と子ども達が疎遠で関係性に問題がある場合は別です。
近年では、被相続人(故人)の後妻(配偶者)と、元妻の子ども達との確執があるケースも多いでしょう。
配偶者と子どもとの相続トラブル
このようなケースで被相続人(故人)の配偶者と子ども達の間で確執があると、お互いが法定相続分を確保しようとします。
●現在住んでいる家に住み続けたい配偶者に対して、子ども達はそれぞれ相続分「遺留分」を主張し、平等に分配されるよう、自宅を売却してお金にしたいと、お互いに一歩も譲らないケースなどです。
また子ども達が家を相続することになれば、配偶者であっても家を追い出されてしまい兼ねませんよね。
このようなケースを未然に防ぐために役立つ権利が、「配偶者居住権」です。
配偶者居住権を行使することで、子ども達は自宅の売却ができません。
被相続人(故人)の配偶者も、今現在住み続けている家に、今後も引き続き住むことができるでしょう。
最後に
今回は、配偶者居住権のメリットデメリットやどのような人に役立つのかを解説したように、「配偶者居住権」は老後資金を確保するためにも必要な権利です。
老後の暮らしは後半になると、年金や預貯金で暮らしていく人が多いため、配偶者居住権を知っているのと知らないのとでは、選択肢の幅も大きく変わります。
ただし、配偶者居住権の利用によって自宅を担保にできない、売却できないなどの状況も置きますから、メリットとデメリット、双方を踏まえて判断するようにしましょう。
まとめ
配偶者居住権のメリットとデメリット
●配偶者居住権とは
・配偶者が家に住み続ける権利●配偶者居住権のメリット
(1)現在住んでいる家に住み続けることができる
(2)老後の生活資金を確保できる
(3)配偶者が代償金を払うリスクが軽減される●配偶者居住権のデメリット
(1)自宅の売却は不可
(2)必要経費がある●配偶者居住権の利用に適した人々
(1)ご自宅の評価額が高額な場合
(2)再婚した妻の家系ではなく、子どもに自宅を相続させたい
(3)配偶者と子ども達が疎遠