遺産分割がまとまらないのはなぜ?6つのパターンと2つの解決方法を解説
2022/10/21
遺産分割がまとまらない場合、未了のまま放置してしまうと、後々相続税の優遇措置が受けられなかったり、相続トラブルが深刻化しやすくなります。
それでも遺産分割協議がまとまらず、未了のまま放置されるケースが多いですが、せめて次世代の相続まで長引かせないことが、後々のトラブル深刻化を防ぐには必要です。
・続く相続トラブルを、法的に解決してしまえないか?
…遺産分割がまとまらないまま時間が経つと、相続人はお互いにこのように考える傾向にあります。
そこで今回は遺産分割がまとまらない場合の解決方法を解説します。
遺産分割がまとまらない6つのケース
遺産分割がまとまらない場合は6つのケースが多くあります。
複数の相続人で遺産分割がまとめらないケースでは、相続人それぞれの感情があるでしょう。
例えば「被相続人(故人)を生前に介護していたのは自分ばかりだったのに、相続で反映されるのは、これだけなの?」などの主張は多いです。
その上で、遺産相続がまとまらない具体的な現象として、下記の6つのケースを多く見受けます。
(1)遺産を独り占めしようとしている
(2)遺産分割の終了前に二次相続が発生
(3)音信不通の相続人が存在する
(4)相続人同士が不仲
(5)被相続人が再婚歴がある
(6)相続の中に不動産が含まれる
現象だけ見ると、相続人に「悪者がいる」ように見えますが、実際に現場で相続人それぞれの話を聴くと、それぞれに想いや納得できる主張があることが多く、それぞれのなかでは「正義」であることも多いです。
これがより遺産分割がまとまらない遠因にもなりますので、相続人はまず俯瞰的に、「自分から見た景色だけが全てではない」として、遺産分割をまとめるよう検討しなければなりません。
それでは、それぞれ詳しく事例を元に解説します。
(1)遺産を独り占めしようとしている
もちろん人間ですので単純に欲深く、遺産を分割せずに、その遺産を全て自分のものにしようとする人もいます。
けれどもなかには、「妹の○○は、母親(被相続人)が病気になってから20年、一度も連絡してこなかった!遺産は一銭たりとも渡したくない!」などの主張もあります。
ただ法的には他の相続人が相続放棄をしたり、納得して捺印をしなければ、遺産の独り占めはできません。
●「遺産分割」では、一定の法律のルールに則って遺産を分割するように定められています。
この相続人それぞれが一定の遺産を相続できる権利が「遺留分」です。
遺産を独占しようとしている相続人がいる場合は、この「遺留分」を主張する、家庭裁判所による裁判が考えられます。
法的処置を取る可能性が出てくるので、その都度弁護士に相談するようにしましょう。
(2)遺産分割の終了前に二次相続が発生
遺産分割がまとまらないまま「未了」となり、放置されたままである場合、遺産分割が終了する前に「二次相続」が発生する可能性があります。
①一次相続…両親の片方が亡くなった時の相続(父または母が生きている)
②二次相続…両親が二人とも亡くなった時の相続(両親ともに亡くなっている)
一般的に相続税やその後の住まいなどに対して、配偶者への優遇措置が取られる一次相続に対し、二次相続の方が相続トラブルは起きやすいです。
また一次相続の遺産分割がまとまらないうちに二次相続が起きてしまった場合、2回に分けて協議をしなければなりません。
一次相続と二次相続、それぞれに論点が増えるため、遺産分割がまとまらない可能性は高まります。
(3)音信不通の相続人が存在する
●遺産分割では、相続人全員の合意と参加がなければ、遺産分割をすることができません。
そのため一部の相続人と連絡が取れない場合は、そもそもの遺産分割をすることができないのです。
●また遺産分割がまとまらないケースでは、相続が発生して初めて、自分達以外の相続人がいたことを知り、調査に時間が掛かったこともあります。
このような事態を防ぐためには、もしも高齢の家族が長期入院を余儀なくされた場合などは、本人が生きているうちに、相続人全員を確認しておくことも良いでしょう。
また推定相続人(後に相続人になることが推定される人)が集まった時には、予め連絡先を聞いておくなど、対処をしておくと効果的です。
(4)相続人同士が不仲
相続人同士の不仲により、そもそも遺産分割協議がまとまらないばかりか、行われないまま、いつまでも平行線を辿るケースもあります。
この場合は、無理をしてお互いが顔を合わせても、遺産分割協議の最中もお互いへの不平不満ばかりになりがちで、まとまるものもまとまりません。
●そのため立ち入ってもらえる第三者が、遺産分割協議に立ち会う方法が適切です。
親族やお互いを知る知人友人でも良いのですが、感情的ではなく、より俯瞰的・客観的に話し合いを目的(遺産分割を終えること)にむかってまとめる人が適切でしょう。
例えば専門的な第三者である弁護士など、士業の人に依頼し、仲介に入ってもらうなどとして対策を練るとスムーズに進みやすくなります。
(5)被相続人が再婚歴がある
被相続人(故人)に再婚歴がある場合は、より相続トラブルが発生しやすいので注意をしてください。
●前妻と後妻の各家族の間で、相続関係のトラブルが発生する確率が高いです。
特に高齢になってから後妻を迎えた被相続人(故人)の世帯では、後妻と前妻の子ども達で相続トラブルを起こしやすいでしょう。
(6)相続の中に不動産が含まれる
相続の中に不動産が含まれると、遺産分割の際に相続人同士で争いが生じやすくトラブルが発展しやすい状況になってしまいます。
●特に近年では遺産を多く残した家よりも、自宅を含めて遺産約5千万円以下の世帯において、相続トラブルが起きやすいです。
「自宅を含めて約5千万円以下」は、遺産のほとんどが自宅の不動産財産になりますよね。
不動産財産の特徴は、売却などをして現金化しないと、それぞれに正確な分配はできない点です。
まずは残された不動産財産の査定依頼をして、売却したらどれほどの金額になるのか…、時価(販売価格)を割り出すことから始めましょう。
・【沖縄の実家相続】不動産相続の評価額☆遺産分割で揉めるのはなぜ?
遺産分割がまとまらない、2つの対処法
以上が遺産分割がまとまらない相続に多い6つのケースでしたが、それでは「何とか遺産分割をまとめて完了したい!」と言う時には、どのような対処があるでしょう。
いつまで経っても遺産分割がまとまらない問題を抱えている場合、現実的に動かすには、やはり下記2つの対処法が適切です。
(1)弁護士などの仲介人に委託する
(2)裁判を申し立てる
家庭裁判所であっても裁判を立てるとなれば、弁護士など専門的な第三者への依頼は必要になってくるでしょう。
いずれにしても相続に詳しい専門家へ相談をすることで、どのような困難な状況で遺産分割がまとまらない場合でも、何かしらの対策は見えてきます。
それでは、下記よりそれぞれ解説します。
(1)弁護士などの仲介人に委託する
遺産分割協議がまとまらない場合は、弁護士などの仲介人を委託し依頼することで、遺産分割での争う点を整理してくれます。
仮に弁護士に依頼した場合、報酬金額の目安は下記です。
①相談料…約5千円ほど/30分
②着手金…約20万円~30万円
③報酬金…相続によって得た利益によって変動
④その他の費用…その他の相続手続きが発生した場合の費用
遺産分割でまとまらないと、「主張の強い相続人が遺産を独占するのではないか?」と不安の声もありますが、実際には遺産を独占しようと思っても、最終的には弁護士が仲介に入ることが多いので、そこで抑制効果が働きます。
わからないことがあっても、相手はプロなのでスムーズにまとめられますし、弁護士からのアドバイスももらえます。
①相談料…約5千円ほど/30分
弁護士事務所によっては、「初回30分の相談料無料」などと謳っているところも多いです。
まず不安点や疑問点を相談してから、依頼をしてください。
②着手金…約20万円~30万円
報酬金は「得た利益の○○%」で計算しますが、着手金はその案件で利益を得ることがなくても、戻ってきませんのでご注意ください。
相続トラブルの行方(調停から審判など)によっては、そのタイミングで追加の着手金を支払う可能性も出てくるので、相談時に確認をしておくと良いでしょう。
③報酬金
●報酬金は、全ての相続トラブルが解決した時点で、支払う料金です。
相続で得た利益を元に計算された金額を請求されます。
・300万円以下…17.6%
・300万円~3千万円…11%+19万8千円
・3,000万円~3億円…6.6%+151万8千円
・3億円以上…4.4%+811万8千円
こちらは日弁連の旧報酬規準ですが、現在でも多くの弁護士事務所でこの料金形態を参考にしています。
相続争いで悩んでいるなら一度相談してみてもいいかもしれません。
(2)裁判を申し立てる
遺産分割協議が相続人同士でまとまらない場合は、裁判を申し立てるのも一つの手です。
●調停委員が仲介として入り、相続人全員が納得できる形で合意を模索します。
もし模索した上で合意が得られない場合、これを裁判所から裁判をし、遺産分割の内容を決定する流れです。
どちらも、専門的な知識が必要になってくる可能性が高いため、弁護士などからのサポートは必須になるでしょう。
是非相談することをオススメします。
最後に
このように、遺産分割協議が相続人同士でまとまらない場合は、弁護士など専門的な第三者に相談する選択が近道です。
金銭的に余裕があるならば、相続手続きまでも複雑な事柄がたくさんあるため、無事に相続を終えるまで、一連の手続きを委託してしまうのも良いでしょう。
・相続財産調査…約20万円~30万円ほど
・相続人調査…約5万円ほど
・相続放棄手続き…約10万円ほど
・遺留分侵害額請求…(3,000万円~3億円)遺留分×5%+9万円
遺産分割協議がまとまらないまま未了として放置してしまうと、各種相続税の優遇措置を受けることができなかったり、そのまま数次相続など、次の相続が重なってしまい、より複雑化する恐れがあります。
ぜひ、この機会に遺産分割協議を完了し、相続手続きのステップへ進みましょう!
まとめ
遺産分割がまとまらない6つのケースと2つの解決法
●遺産分割がまとまらない6つのケース
・遺産を独り占めしようとしている
・遺産分割の終了前に二次相続が発生
・音信不通の相続人が存在する
・相続人同士が不仲
・被相続人が再婚歴がある
・相続の中に不動産が含まれる●まとまらない時2つの解決法
・弁護士などの仲介人に委託する
・裁判を申し立てる