住宅ローンの共有名義人だった夫(妻)が死亡すると、「今後の返済はどうなるのだろう…」「どのような手続きをするのだろう…」と、戸惑うご相談も多いですよね。
ただ住宅ローンの契約では、夫婦の共有名義である場合、連帯保証や連帯債務、ペアローンなど、契約形態にいくつかの種類があります。
住宅ローンの契約形態によって共有名義人である夫(妻)が死亡した時、それぞれ対処法は変わるでしょう。
今回は、住宅ローンの共有名義だった夫(妻)が死亡した場合、債務はどうなるのか…、債務が残るケースと対処法をお伝えします。
住宅ローンの契約形態を知ろう!
まず住宅ローン契約で共有名義だった夫(妻)が死亡した時、まずは契約形態を改めて確認しましょう。
…と言うのも、戸建て住宅やや分譲マンションの住宅ローン契約が夫婦の共有名義だと、下記3つの契約形態に分かれます。
(1)連帯債務
(2)連帯保証
(3)ペアローン
住宅ローンの共有名義人だった夫(妻)が死亡した時、まずはそれぞれの契約形態による違いを確認してから、今後の対処を検討してください。
(1)連帯債務
「連帯債務」とは、夫婦の収入を合算して銀行から融資を受け、決定する契約形態です。
連帯債務は契約者とは別に連帯債務者が設定され、一般的に、契約者は団体信用生命保険に加入します。
●連帯債務者が万が一死亡、もしくは、高度な障害が残った場合でも、支払い義務が発生し、毎月返済をしなくてはなりません。
・ただし「住宅金融支援機構(フラット35)」で、連帯債務者が団体信用保険に加入していた場合を除く。
「住宅金融支援機構(フラット35)」であれば、契約者や連帯債務者も団体信用生命保険に加入することができます。
そのため仮に、契約者と連帯債務者が死亡した場合でも、その両者が団体信用生命保険に加入していれば、相続によって取得した人は全額免除されるでしょう。
(2)連帯保証
「連帯保証」とは連帯債務と同様で、夫婦の収入を合算して銀行から融資を受け、決定する契約形態です。
連帯債務と連帯保証の違う点は、団体信用生命保険に加入できるのは契約者本人のみ、と言う点になります。
●仮に契約者が亡くなっても名義変更することで単独名義になるため、保証が適用され支払い義務を問われずに済むでしょう。
逆に連帯保証人が何らかの形で死亡した場合、支払いができなければ、抵当権の実行により住まいを失うことなるので注意が必要です。
(3)ペアローン
「ペアローン」とは、夫と妻で別々に住宅ローンを締結する契約形態になります。
つまり、夫婦がお互いに相手の連帯保証人です。
団体信用生命保険に加入しているため、「万が一の事態に備えているから大丈夫!」と考える夫婦が多いのですが、実はそうでもありません。
●夫婦どちらかが死亡した場合、仮に夫が死亡したと仮定すると、夫の支払いは免除されますが、妻の支払いは続くデメリットがあります。
・亡くなった側の住宅ローン…支払い免除
・残された側の住宅ローン…返済は継続
このように「ペアローン」はそれぞれが独立して、住宅ローンを凍結する契約形態です。
自分が契約した住宅ローンの借入分は、共有名義人だったパートナーが死亡しても、返済義務が残ります。
残債が残る3つのケース
ただ住宅ローンの共有名義人だったパートナーが死亡した時、支払い義務が生じない契約形態も多いです。
けれども前述したように住宅ローンの共有名義人が死亡しても、残債が残る契約形態もあります。
この違いは、団体信用生命保険加入の有無が影響しているでしょう。
(1)団体信用生命保険に加入していない
(2)支払事由に一致しない
(3)団体信用生命保険の契約が失効している
そのため住宅ローンを夫婦の共有名義で契約するならば、死亡した時を想定して、できる限り夫婦双方が団体信用生命保険に加入するに越したことはありません。
それでは、下記より住宅ローンの共有名義人だった夫(妻)が死亡した場合に、債務が残る3つのケースを、より詳しく解説します。
(1)団体信用生命保険に加入していない
住宅ローンを組む際、団体信用生命保険に加入する義務はありません。
団体信用生命保険の加入がなければ契約できない住宅ローン商品もありますが、本来は任意で加入する保険です。
そのため住宅ローンの契約者が死亡した時、共有名義人が団体信用生命保険に未加入の可能性があります。
●団体信用生命保険に加入さえしていれば、契約者が死亡しても、支払いの義務は問われません。
→一方、契約者が団体信用生命保険に未加入だった場合、住宅ローンの残債は残された家族に支払い義務として残されます。
このようなことから契約者が団体信用生命保険に加入していない場合、相続時には負の遺産まで相続されることになるので、相続放棄を視野に入れておきましょう。
(2)支払事由に一致しない
住宅ローンの共有名義人だった場合、夫(妻)が死んだ時に団体信用生命保険に加入していても、契約違反をした場合での保証は無効になります。
●病死や事故死を除き、保証開始から一定期間内での自殺や、告知内容に偽りがあると保証対象外になってしまうのです。
(3)団体信用生命保険の契約が失効している
住宅ローンの返済が延滞していたり、契約が失効している場合にも保証対象外です。
団体信用生命保険の保険料は契約者が返済しているのではなく金融機関が返済しているので、住宅ローンの延滞が続いた場合は、金融機関の保険料の支払いはストップします。
●返済がストップした結果、補償を受けるための必要な保険料が支払われていないので、団体信用生命保険の契約は失効してしまうのです。
住宅ローンの対処法(共有名義人が死亡した時)
住宅ローンの共有名義人が死亡した時、団体信用生命保険の保証対象であれば完済できるので問題はありません。
ただ残債が残った場合、どのように対処しなくてはいけないのでしょうか。
残債が残った場合の対処法は以下の2つで対策ができます。
(1)住宅ローンの借り換え
(2)不動産を売却
特に夫婦で協力して住宅ローンを返済していると、共有名義人(配偶者)が死亡すると、返済の継続が難しい事態にもなり兼ねません。
その厳しさがどれほどの負担になるのか…、可能性に合わせて上記2つの対策を選ぶと良いでしょう。
(1)住宅ローンの借り換え
住宅ローンの共有名義人が死亡した場合、特別な手続きを取らなくても返済をムリなく継続できれば問題はありません。
ただ収入源が減ることで返済が困難になるようであれば、住宅ローンの借り換えを検討しましょう。
●住宅ローンの借り換えをすることで、低金利に変更することができ、毎月の支払額を減額できる可能性があります。
仮に住宅ローンの審査が通らなくても、現在借入を行っている金融機関に相談することで、返済期間の延長ができる可能性もあるでしょう。
(2)不動産を売却
住宅ローンの共有名義人が死亡した時、引き続き返済義務が課されると、一人の収入源では返済が厳しくなるケースが多いです。
●金融機関への相談や借り換えでも、返済能力に不安があるのでれば、現在住んでいる不動産を売却し、住宅ローンを完済するのも良いでしょう。
ただアンダーローン(売却額で住宅ローンを完済できない状態)になっていないかどうか、不動産会社で査定を依頼して、具体的な数字を確認すると、計画を進めやすいです。
最後に
以上が住宅ローンの共有名義人だった夫(妻)が死亡した時、返済義務が残るパターンと、対処法をお伝えしました。
住宅ローンの契約形態によって支払い義務があるもの、団体信用生命保険に加入していれば、支払い義務がなくなるものがあるので、まずは確認をしてください。
万が一、支払い不能に陥りそうになった時は、一度金融機関に相談するようにしましょう。
最終的には持ち家の売却も検討します。
これからの無理のない暮らしを最優先し、適切な判断をしましょう。
まとめ
共有名義人だった夫(妻)の死亡で債務が残る場合
●夫婦の住宅ローン3つの契約形態
(1)連帯債務
(2)連帯保証
(3)ペアローン●債務が残る3つのケース
(1)団体信用生命保険に加入していない
(2)支払事由に一致しない
(3)団体信用生命保険の契約が失効している●2つの対処法
(1)住宅ローンの借り換え
(2)不動産を売却