沖縄の不動産の相続では、相続人それぞれの評価額(資産価値)への認識が違い、遺産分割協議でまとまらないケースが少なくありません。
不動産の相続税における評価額は、毎年4月頃に届く固定資産税の納税通知で確認できますが、固定資産税評価額と実勢価格(時価)との違いがあるためです。
遺産分割協議で揉めた場合、エスカレートすると家庭裁判所まで持ち越されますが、後々まで遺恨が残る争いは避けたいですよね。
今回は、沖縄で不動産相続における評価額と、遺産分割で揉める原因、解決方法までお伝えします。
【沖縄の実家相続】不動産相続の評価額☆
遺産分割で揉めるのはなぜ?
不動産の評価額とは
不動産は土地の評価が高いことを差す「一物四価・一物五価」などの言葉もあるほど、土地への評価が家屋よりも高い傾向です。
では不動産の評価は一体どのように位置づけられるものなのでしょうか。
それぞれの「目的・価値」が異なり、評価方法が変わってくることから以下の4つに分類されています。
<不動産、4つの評価方法>
(1)地価公示価格
(2)固定資産税評価額
(3)路線価
(4)実勢価格
冒頭でお伝えしたように、不動産の相続税評価額は、土地においては(1)地価公示価格(3)路線価を、家屋については(2)固定資産税評価額を基準による計算です。
一方、実際に不動産を相続して売却する際の評価額は、不動産会社の査定などにより算出されますが、(4)実勢価格(時価)で実際には販売、売買されるでしょう。
これが遺産分割協議で揉めやすい要因なのですが、まずは不動産相続における評価方法、売却時の評価方法について、それぞれ詳しくお伝えしていきます。
(1)地価公示価格
「地価公示価格」とは、国土交通省が毎年1月1日時点での標準地の正常な価格を3月に知らせるものです。
一般の土地取引の指標になるとともに、固定資産税評価額や路線価を算出する時の基準にもなる数字です。
※国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で確認できます。
(2)固定資産税評価額
「固定資産税評価額」とは、各自治体が固定資産税の計算をする目的として行います。
国が定めているガイドラインに沿って3年に1回更新され、毎年4月頃に届く固定資産税の納税通知書で確認できるでしょう。
(3)路線価
「路線価」とは、不動産における相続税を計算をする評価額の基盤になるもので、毎年7月に国税庁から公表される数字です。
※国税庁・財産評価基準書「路線価図・評価倍率表」により、確認できます。
(4)実勢価格
「実勢価格」とは、不動産市場で実際に取引されている価格価値のことです。
<実勢価格>
●一般的に不動産売買で基準とされる価格を差し、一般的には不動産会社に査定依頼をして販売価格(実勢価格)を算出してもらい、これを基準に売り主は販売価格を決定します。
ただ不動産市場において実勢価格は時勢に連動しているため、常に変動しているのが特徴です。
そのため実勢価格は一般的に「時価」とも言われます。
※不動産の販売価格を決定する基準になるため、不動産財産の相続人としては、この評価額ができるだけ高い遺産を相続したいと考えるでしょう。
沖縄の不動産相続で評価額が問題になるケース
沖縄の不動産相続で評価額による相続人間トラブルが多発する理由には、上記4つの評価基準のどの数字に焦点を当てるのか、が相続人によって違うためです。
<沖縄の不動産相続で評価額が問題になるケース>
●沖縄では、どの不動産評価額を基準にするかがポイントです。
・不動産相続における評価額
・不動産売却における評価額(実勢価格)
また現実的な利益となる実勢価格(時価)は、前述したように常に価格が変動していること、また、依頼する不動産会社によって査定額(評価額)に違いがある場合もあるでしょう。
相続税評価額と実勢価格の違い
沖縄で不動産相続税における評価額と、実勢価格では、一般的に不動産相続税における評価額の方が実勢価格よりも8割安いとされてきました。
<沖縄で不動産の相続税評価額は、実勢価格の8割>
●例えば、不動産会社へ査定を依頼して4,000万円だった不動産が、相続税評価額では3,200万円になる可能性があります。
では沖縄で不動産財産の相続税評価額が3,200万円、預貯金財産が5,000万円だった場合、相続人が兄弟AとBの2人だっとして、どのようなことが想定できるでしょうか?
<相続税評価額と実勢価格の食い違い>
(1)不動産財産を相続税評価額3,200万円で計算した場合
・兄Aさん…不動産財産3,200万円、預貯金財産900万円を相続
・弟Bさん…預貯金財産4,100万円を相続
(2)不動産財産を実勢価格4,000万円で計算した場合
・兄Aさん…不動産財産4,000万円、預貯金財産500万円を相続
・弟Bさん…不動産財産4,500万円を相続
…このように相続人2人の財産分与が変わる訳です。
ここでお互いの主張が平行線のままだと、裁判所へと発展します。
家庭裁判所に持ち込まれた場合
遺産分割協議が平行線になり、家庭裁判所へ持ち込まれた場合、家庭裁判所は原則実勢価格を採用します。
けれども「実勢価格」自体が前述したようにコロコロと変化する数字です。
そのため家庭裁判所ではさまざまな資料を元に、実勢価格を判断します。
<家庭裁判所による実勢価格>
●家庭裁判所で一番有力な資料は、不動産鑑定士による鑑定書です。
…ただし鑑定書を入手するには多額の費用が掛かる(約30万円ほど)ため、沖縄では不動産相続時に不動産会社に査定を依頼して、評価額を出す人が多いでしょう。
この場合、不動産会社の多くは無料で査定、鑑定書を作成してくれますが、これは「簡易鑑定書」と呼ばれます。
不動産会社によって査定額が変わる場合
また、最初からどの相続人も実勢価格を基準にしたとしても、依頼する不動産会社によって査定額(評価額)が違うために揉める事例もあるでしょう。
依頼する不動産会社によって査定額(評価額)が変動するのは、下記の理由です。
<不動産会社によって査定額が変化する理由>
・不動産会社によって得手/不得手が違う
・不動産会社がどこを重点的に見ているか
…例えば個性的な戸建て住宅を、二つの不動産会社に査定依頼したとします。
一方が一般ファミリー層への売買案件に強い会社であれば、個性的な住宅は「住みやすさ」を求めるファミリー層には敬遠されるため、評価額も低くなりがちです。
けれどももう一方が別荘販売を得意とする会社だった場合はどうでしょう?
別荘は住みやすさを重視しませんし、日常から離れた空間として個性的な戸建て住宅は魅力的です。
…このように相続人それぞれが違う不動産会社で査定を依頼した場合、評価額も違うケースがあるのです。
沖縄の不動産で相続税評価額を用いる理由
このようなことから、実勢価格は正確な数字を出すことができないため、遺産分割協議で後々まで揉めないためには、沖縄では不動産財産は相続税評価額を基準に分割する方法が、スッキリします。
遺言書には財産目録において、沖縄では不動産財産の評価額を遺言者(被相続人)が記載していますので、このような「誰が見ても同じ数字」を基準に分割することで、揉め事はより回避されやすいです。
最後に
今回は、沖縄での不動産の相続税評価額と実勢価格の違いにより、遺産分割協議で揉めやすいことを詳しく解説しました。
沖縄では相続した不動産の評価額をきちんと調べても、常に価格変動があり、いざ相続をする際に遺族間でのトラブルに発展することが、いつまで経っても遺産分割協議がまとまらない原因です。
ただ沖縄では不動産財産は、相続税評価額以外にも「分けられない財産」として揉めやすいでしょう。
この不動産財産をどうするか…、売却して現金化するか、共有財産とするのか(こちらも後々は揉めやすいです)、相続人それぞれが俯瞰して、最も良い方向を見出す話し合いが、遺産分割協議を長引かせないポイントです。
このようなトラブルを回避する為にも、日々の生活の中で、親族とのコミニュケーションをしっかりととり、いざとなった時にお互い支えあえる協力関係を取りましょう。
まとめ
沖縄での不動産評価額によるトラブルとは
(1)不動産評価額の違い
・相続税評価額
・実勢評価額(2)相続税評価額は実勢評価額の8割
(3)相続人により評価額の基準が違う
(4)実勢価格の場合、数字が曖昧
(5)相続税評価額を基準にする方が揉めにくい