独立した夫婦共働き世帯に選ばれる住宅ローンが連帯債務です。
夫婦それぞれが独立して安定した収入がある世帯でメリットの多い住宅ローンの形で、仕組みとしては主たる債務者が2人(夫と妻)存在することになります。
金融機関としては主債務者が2人いるために、請求先が2つになるメリットがあり、住宅ローンの連帯債務を選んだ夫婦にとっては、その分融資限度額が増える可能性がメリットです。
ただ気になるのは、夫婦いずれかが亡くなった時や離婚した時にはどうなるか…、ではないでしょうか。
今回は、共働き夫婦に選ばれる現代に多い住宅ローン「連帯債務」について、2つのメリットと2つのデメリット、そして離婚や死亡時まで見据えた相続までお伝えします。
共働き夫婦、住宅ローンの連帯債務☆
離婚や配偶者の死亡でどうなる?
連帯債務とは?
住宅ローンの連帯債務の仕組みの前に、一般的な「連帯債務」について解説します。
<連帯債務とは>
●一つの債務を分担して複数人で負担すること
…例えば片方の連帯債務者が自分の債務を完済した場合、他の人の債務まで返済をする仕組みです。
連帯債務と連帯保証の違い
また住宅ローンには連帯債務の他に連帯保証制度があり、この2つは勘違いされやすい傾向にありますが、全く違う仕組みです。
<住宅ローンの連帯債務と連帯保証>
●例えば、夫婦で住宅ローンの連帯債務・連帯保証にした場合…、
(1)連帯債務…対等な関係
・夫が主債務者…返済義務がある
・妻も主債務者…返済義務がある
(2)連帯保証…主従関係
(夫を主債務者とした場合)
・夫が主債務者…返済義務がある
・妻が連帯保証…夫が返済できない時、代わりに返済義務が生じる
住宅ローンには、この連帯債務・連帯保証の仕組みの他に、「ペアローン」もあります。
ペアローンの場合は、夫婦それぞれ主債務者ではありますが、それぞれ別に住宅ローンを組んでいるような仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
※詳しくは下記記事をご参照ください
・夫婦の住宅ローンは離婚や死亡時どうなる?連帯債務・連帯保証・ペアローン
一般的な連帯債務は、負債も相続
住宅ローンの連帯債務については、団信保険が付いているので「誰が団信に入っているか」などにより免責も考えられますが、住宅ローン以外の連帯債務では、連帯債務者の死亡時にも注意が必要です。
相続はプラスだけではなく負の財産も相続します。
さらに連帯債務者には債務を肩代わりして返済する義務がありますから、原則的に返済義務が生じると考えてください。
※ただし夫や親の連帯債務者ではなく、借金を背負った夫や親が亡くなった場合、相続をしない相続放棄や限定的に相続をする限定相続を選択することで、借金の返済義務を負わずに済む可能性もあります。
※詳しくは別記事をご参照ください。
・借金を抱えたまま夫が亡くなった場合、相続人や連帯保証人はどうなるの?
住宅ローンの連帯債務は?
住宅ローンの連帯債務は、借入契約書の借主になることです。
連帯債務は複数の債務者が債権者に対して、独立して返済をしていく仕組みでした。
<住宅ローンの連帯債務>
●住宅ローンの連帯債務ではひとりの債務者が完済すると、住宅ローンの債権者は、連帯債務者に返済請求をしても良い訳です。
夫婦に多い住宅ローンの連帯債務
では夫婦で住宅ローンの連帯債務を選択すると、具体的にどのようになるのでしょうか。
夫が主債務者・妻が連帯債務者として、住宅ローンを夫婦2人で返済していくとします。
<住宅ローンの連帯債務の一例>
・引き落とし口座は1つが一般的
・片方に返済できない場合、他方に返済義務が発生
万が一、どちらか債務を返済できないことになっても、どちらかが「滞納金を含めた債務額を返済しなければならない」義務が発生してくるので注意しましょう。
住宅ローンで連帯債務を選ぶメリット
では住宅ローンで連帯債務を選ぶメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
<住宅ローン、連帯債務のメリット>
(1)借り入れ額が増える可能性
(2)住宅ローン控除の対象が増える
住宅ローンの連帯債務者になるメリットを、下記よりそれぞれ詳しく掘り下げていきます。
(1)借り入れ額が増える可能性
特に沖縄では地価も上がり北部や南部など地方でも4,000万円以上は当たり前、5,000万円台6,000万円台の一般的な戸建て住宅も増えるなか、希望の借り入れ金額に融資額が満たないケースも少なくありません。
<借り入れ額が増える可能性>
●けれども住宅ローンで連帯債務を選ぶことにより、夫婦の収入が合算されて融資額が算出されるため、より多くの融資額の設定が期待できます。
一般的には年収の3分の1しか借入ができないとされています。
そのため理想のマイホームを実現するには夢のまた夢と感じる人も多いでしょう。
けれども住宅ローンで連帯債務を選ぶことにより、夫や妻ひとりの年収ではなく、夫婦の収入を合算できるので、その分の希望金額に沿った審査が期待できます。
(2)住宅ローン控除の対象が増える
住宅ローンで連帯債務者を選ぶことにより、それぞれ独立した主債務者とされるので、住宅ローン控除を受けることが可能です。
住宅ローン控除の対象は、ローンを組んでいる主債務者ですので、反対に考えると、立場上主債務者ではない、住宅ローンの「連帯保証人」制度を選んだ場合は対象外となります。
<夫婦で住宅ローン控除の対象>
●夫婦で共有名義にすることで、所得税・住民税に対して、住宅ローン控除が利用できるため、単独名義と比較して税金も減税されるのです。
しかし夫婦2人で住宅ローン控除を受けるためには、どちらか一方が連帯債務者となり、住宅ローンを組む必要があります。
そのため夫が連帯保証人になって住宅ローンを組んだとしても、夫は住宅ローン控除が受けられないので注意が必要です。
連帯債務者のデメリット
このように夫婦で返済する住宅ローンではメリットの多い連帯債務ですが、もしもの場合によってはデメリットとなる可能性も否めません。
<住宅ローン、連帯債務のデメリット>
(1)債務者は返済を維持しなけらばならない
(2)離婚しても契約は解消されない
特に夫婦間で離婚した場合、片方が死亡した場合には大きな問題が生じますが、死亡した場合に注意した事柄は、団信(団体信用生命保険)加入の有無です。
(1)債務者は返済を維持する
住宅ローンの連帯債務におけるデメリットとしては、夫婦2人が債務者となるため、それぞれの返済を維持する必要がある点でしょう。
共働き夫婦が住宅ローンで連帯債務を利用するケースでは、まだ子どもがいない段階の新婚時代が多いです。
この時、将来的な出産や子育てによる離職、病気やケガによる療養の可能性まで考慮しなければなりません。
<債務者は返済の維持が必要>
●仮に出産・病気療養・ケガなどの緊急時、どちらか一方が返済できない場合でも、どちらかが返済を肩代わりします。
また贈与の基礎控除枠からオーバーしてしまうと、贈与税が課税させることになるので注意が必要です。
片方が死亡した場合
ここで気になる点が、夫婦で住宅ローンで連帯債務を選んだ場合に、夫婦のいずれかが死亡した場合の返済状況ではないでしょうか。
一般的な連帯債務は残された債務者に返済義務が残りますが、住宅ローンの連帯債務の場合、団信(団体信用生命保険)の加入状況がポイントです。
<片方が死亡した場合>
●民間金融機関が提供する住宅ローンの連帯債務では、主たる債務者ひとりのみ、団信に加入できますが、ここでは主たる債務者を夫とした場合で解説します。
・夫が死亡…(夫が団信に加入しているため)妻の返済は免れる
・妻が死亡…(妻は団信に加入していないため)夫は返済義務が残る
…このような流れになりますが、唯一、政策金融機関の独立行政法人である住宅金融支援機構がバックアップする「フラット35」に関しては、住宅ローンで連帯債務を選んだ場合でも、夫婦両方の団信加入が可能です。
(2)離婚しても契約は解消されない
ただ住宅ローンの連帯債務を選んだ場合、多くの夫婦が危惧する問題が離婚ケースです。
では夫婦間でのトラブルが離婚まで発展してしまった場合には、住宅ローンの連帯債務契約はどうなるのでしょうか。
<離婚しても解消されない>
●まず原則として、住宅ローンは金融機関との取引です。
そのため、夫婦が離婚しても住宅ローンの連帯債務契約は解消されません。
そのため夫婦が離婚して、不動産の名義をどちら片方に変更したとしても、住宅ローンを組んだときに「連帯債務」で契約しているので、返済義務からは解放されることがないので、この点は注意が必要です。
どうしても一切の夫婦関係を絶ちたい場合には、借り換えなどの方法があるでしょう。
最後に
以上、夫婦で住宅ローンの連帯債務を選んだ場合、離婚時や片方が死亡した場合に起きる事柄です。
ちなみに住宅ローンの連帯債務は、夫婦ばかりではなく親子でも選ぶケースがあります。
例えば親世帯と子世帯で二世帯住宅を建てた場合、親の年齢が住宅ローンを組むのに十分だった場合には、親子による住宅ローンの連帯債務はあり得ます。
この場合、親が団信に入っていない場合には、夫婦のケースと同じように、子ども世帯の返済義務は残ります。
親が団信に入っていれば、親が先に亡くなった場合に子どもは親の債務に対する返済義務はありませんが、一般的な金融機関が提供する親子ローン(親子リレーローンなど)では、親の団信加入ができない商品が多いので、この点は注意をしてください。
まとめ
夫婦で住宅ローンの連帯債務、離婚や死亡時はどうなるの?
・連帯債務は夫婦それぞれに対等な返済義務がある
●死亡時
・団信加入で返済は免除
・団信に入っていなければ返済義務は継続
・民間金融機関では主債務者のみ団信加入が多い
・フラット35などでは夫婦両方が団信加入できる●離婚時
・原則連帯債務契約は解消されない
※借り換えなどの手段により契約を解消する方法