【沖縄の実家相続】遺言書で代償分割を指定する?家を残す3つの対策
2022/6/21
沖縄の相続対策では、家など不動産財産を残すために、遺産分割の方法として「代償分割」を遺言で指定する人も多いです。
「代償分割」とは、家などキレイに分割されない遺産を相続した人が、他の相続人に現金などを支払うことによって均等に遺産分割する方法となり、不動産財産などを売却せずに分割できます。
沖縄では遺言による相続対策で代償分割を指定するケースは、残される同居家族に家を残そうとする場合が多いです。
今回は沖縄の相続で、代償分割以外にも住まいとなる家を残す方法はないのか…、3つの対策をお伝えします。
【沖縄の実家相続】遺言書で代償分割を指定する?
家を残す3つの対策
遺産4つの分割方法
遺産を複数の相続人で分ける時、主に4つの分割方法があります。
<沖縄の相続対策☆4つの分割方法>
(1)代償分割(だいしょうぶんかつ)
(2)換価分割(かんかぶんかつ)
(3)現物分割(げんぶつぶんかつ)
(4)共有分割(きょうゆうぶんかつ)
…ただし、今回は「家を残す」ことを目的とした沖縄の相続対策です。
そこで(2)換価分割では、そもそも家を売却して現金化して均等に分割する方法となり、結果的に家が残らないため、今回の対策には入りません。
もちろん法定相続人の全員が納得して分割協議を終えたのであれば、遺産分割が平等でなくても問題はないのですが、相続人が納得していない場合「遺留分」を請求できます。
遺留分が問題
「遺留分」とは、遺産を相続人全員が納得して分割するためのガイドラインとして、法定相続人が最低限受けられる相続財産の権利です。
<沖縄の相続対策☆遺留分>
●ここでは、大まかな遺留分をお伝えします。
(1)相続人が配偶者のみの遺留分…遺産×1/2
(2)相続人が子どものみの遺留分…遺産×1/2
(3)相続人が直系のみの遺留分…遺産×1/3
※遺留分を侵害された場合、相続人は「遺留分減殺請求」を行使することができます。
この遺留分を侵害せず平等に遺産分割を行うために、キレイに分割されない遺産をどのように分割するか…、が4つの分割方法です。
※遺留分に関しては別記事に詳しいです。
・【沖縄の実家相続】遺言書で遺留分を侵害したら無効?生前にできる対策
代償分割とは
沖縄の遺言書による相続対策に多い「代償分割」とは、不動産など均等に分割できない遺産を相続した人が、他の相続人の相続分を現金で支払い、平等に分割する方法です。
<沖縄の相続対策☆遺留分による分割>
●例えば、遺産が「5千万円の実家+1千万円の預貯金財産」、相続人が配偶者+子ども2人だった場合
・配偶者(親)の遺留分…3千万円
・子ども1…1千5百万円
・子ども2…1千5百万円
代償分割のデメリット
けれども遺留分を基準にすると、配偶者は5千万円の実家を売却しなければなりません。
そこで2千万円を「代償分割」によって分割します。
<沖縄の相続対策☆代償分割の一例>
●遺留分に満たない金額は、相続した配偶者(親)が現金で支払うため、下記のようになるでしょう。
・配偶者(親)の相続…実家5千万円
・子ども1…5百万円+親より1千万円
・子ども2…5百万円+親より1千万円
これで解決できますが、問題は残された配偶者(親)が代償となる現金を支払えるかどうかです。
上記の例では2千万円(子ども2人それぞれに1千万円ずつ)になります。
そのため沖縄で遺言による相続対策に代償分割を指定する場合には、充分な保険金を準備するなど、それなりの財産が残らなければなりません。
相続した実家を担保にした代償分割
そのため沖縄の相続対策では、実家を担保にして融資を受けて現金化し、その現金を代償分割として支払うケースもあります。
けれどもこの方法は将来的にリスクも孕んでいることを理解してから決めるべきでしょう。
<借金による代償分割のリスク>
・相続した不動産を担保にして借金を抱える場合、返済が困難になる可能性を孕んでいます。
また、担保として不動産価値が将来的に下落すると、破産リスクも出てくるでしょう。
同居家族のために家を残したいケースでは、相続人側も高齢であるなど、借金を抱えるにはリスクが大きいケースも少なくありません。
あくまでも借金を抱えずに遺産分割ができる方法を選ぶと安心です。
現物分割とは
続く現物分割とは、遺産を現金化せずに相続人それぞれがそのまま相続する方法です。
<沖縄の相続対策☆現物分割の一例>
●例えば、実家3千万円・土地3千万円・車5百万円・別荘2千5百万円、預貯金財産3千万円、相続人が子ども3人だった場合
・長男…実家3千万円+預貯金財産1千万円
・次男…土地3千万円+預貯金財産1千万円
・三男…車5百万円+別荘2千5百万円+預貯金財産1千万円
…ここまでキレイに分割されることはあまりありませんが、大まかに現物を分け合い、平等に分割します。
現物分割のデメリット
ここで分かるように現物分割は、それぞれが現物で相続できるだけの遺産がなければ成立しません。
前項の「代償分割」でお伝えしたような、5千万円の不動産財産がメインの遺産だった場合などは、それに相当する現物分割ができない点がデメリットです。
共有分割とは
共有分割とは、不動産などキレイに分割できない遺産を残したまま、その権利を分割して相続する方法です。
一見、最も平和的な解決方法に見えますが、相続人それぞれに権利があるので、将来的に売却したい時など、意見が合わずこじれる可能性は否めません。
<沖縄の相続対策☆共有分割はトラブルの元>
・兄弟間で売却への希望が違う
・修理や建て替え、リフォームのタイミング
・売却に同意をしても、方針の違いがある
…などなど、売却に同意をしても、例えば高値でゆっくり売却したい兄と、安値でも早急に売却してしまいたい弟、更地にして売却したい妹など…、その内容は微妙に異なることは多いです。
このようなことから決定権を複数の相続人が持っていると、細かな部分で揉めやすい傾向にあります。
※共有分割によるトラブルについて、詳しくは下記記事に詳しいです。
・【沖縄の実家相続問題】共有名義での解決はトラブルの元?
「配偶者居住権」もアリ
住まいを残したい家族が配偶者であれば、2020年4月から始まった制度「配偶者居住権」の利用も良いでしょう。
家を残したまま、居住権と所有権を分けた遺産分割ができます。
特に実家の不動産財産以外の遺産がほとんどないケースでは、子どもと親で円満な遺産分割が可能なケースが増えました。
<沖縄の相続対策☆配偶者居住権の一例>
●相続人は母親と同居する長男と次男、遺産は2千万の実家と1千万円の預貯金財産でした。
→遺留分※は、母親が遺産の1/2として1千5百万円、長男と次男が残りの1千5百万円を折半するとして750万円です。
・母親…実家の居住権(1千5百万円)
・長男…実家の所有権(5百万円)+預貯金財産(250万円)
・次男…預貯金財産(750万円)
(※)遺留分とは、相続人がそれぞれ最低限の遺産をもらう権利で、あくまでも遺産分割のガイドラインではありますが、相続人が納得できない場合には遺留分減殺請求ができます。
この例では、母親は実家の居住権を得たまま、皆が納得できる遺産分割が実現しました。
まとめ
以上が遺言書によって家族に実家を残す、沖縄に多い相続対策です。
最後の事例では、長男も母親と一緒に実家に暮らしているため、必ずしも母親が配偶者居住権を主張しなくても良かったのですが、長男が今後、結婚をする将来も見据えて、被相続人としては配偶者が居住権を持つほうが安心できると思った末の判断でした。
ただ被相続人が遺言書で相続対策を行ったとしても、築年数の古い実家になると、リフォームや修理修繕でお金が掛かるなど、メンテナンス・維持費用がかさむとも限りません。
相続人同士で相談して実家を売却し、より済みやすいコンパクトな住まいやマンションなどに移り住むケースも多く見受けます。
※築年数の古い実家の売却などについては下記記事でも解説しています。
・相続した実家が売れないのはなぜ?空き家が売れない理由と5つの対策
遺言書でできる実家を残す3つの対策
・代償分割
・現物分割
・共有分割※配偶者なら「配偶者居住権」も利用できる