高齢者が増える沖縄で、家族信託を検討する家族が増えていますよね。特に沖縄で家族信託は、被相続人ではなく子どもや孫など家族からの相談が多い傾向にあります。
ただ終活を進めるに当たり、高齢になればなるほど感情が先立ち、事務的に相続に関する事柄の進行が難しく感じる方々も多いです。このような方々にも、沖縄の終活現場では家族信託を検討する方もいるでしょう。
今回は、今沖縄で相談の多い家族信託について、そもそも「家族信託とは何か?」から、メリット・デメリットまでお伝えします。
【沖縄の終活】家族信託で財産管理を託す?
メリットとデメリット
沖縄で注目される「家族信託」とは?
終活活動の柱のひとつが「相続対策」ですよね。ただ、高齢になると出てくる資産に関する不安は、相続発生後の財産分割だけではありません。
【 沖縄の終活☆家族信託とは? 】
● 「もしも認知症になったら…」「介護が必要になったら…」資産管理は一体誰が行ってくれるのでしょうか。莫大な財産であれば弁護士などを雇う選択もありますが、一般家庭では、そこに大きな予算を掛けるのは想像できないでしょう。
→ このような時、その資産を家族に託して管理や処分の判断を任せる仕組みを、「家族信託」と言います。
※ 資産を任せる人が「委託者(いたくしゃ)」、資産管理を任せられる人が「受託者(じゅたくしゃ)」、任せる財産が「信託財産(しんたくざいさん)」です。
…また、信託財産から利益を得る人(財産権を持つ人)は「受益者」と言います。家族信託の契約を交わすと、不動産などの信託財産は、受託者の名前に名義変更されるように、受託者は財産の管理や処分まで、一切の判断が可能です。
ここで家族信託は「民事信託」のなかのひとつの種類になりますが、それに対する言葉が「商事信託」となります。この「商事信託」には投資信託なども含まれるため、しばしば誤解が生じやすいでしょう。
【 沖縄の終活☆家族信託は民事信託 】
● 家族信託は「民事信託」のひとつです。対する投資信託などは「商事信託」であり、性質が異なります。
(1) 商事信託 … 代表的なものは信託商品・投資信託などです。主に信託銀行が扱っており、財産を「営利目的」で運用します。
(2) 民事信託 … 代表的なものが家族信託です。家族など民事で取り扱う信託で、財産を「非営利目的」で管理します。
つまり商事信託は収益をつくることが目的なのでリスクも伴いますが、民事信託は収益や利益を目的とせず、信頼の元で財産管理や処分を任せる仕組みです。
今回の記事は家族信託について扱っていますが、民事信託ではこの他、非営利目的の第三者へ委託することもできるでしょう。
沖縄では家族信託か☆後見人制度か
今回は沖縄の終活現場における家族信託についてお伝えしていますが、実は今、沖縄で家族信託の相談は、子どもや孫など家族から受けるケースが多くあります。
終活を検討する方々は自分の終末と向き合う覚悟がありますが、高齢になればなるほど、死を前提とした作業がつづく終活は辛いものですよね。けれども現実的に相続対策は進めなければなりません。
【 沖縄の終活☆死を前提としない 】
● 家族信託はそもそも財産管理や処分を託す契約です。そのため相続を前提(死を前提)としなくても、子どもや孫(相続人)の立場から、提案することができます。
→ 例えば、委託者の老後資金や介護費用などの管理として、話を持ち出すことは可能です。また認知症などの対策としても利用できるでしょう。
沖縄で注目される家族信託は、預貯金や不動産財産、有価証券なども任せることが可能です。沖縄では家族信託の契約書作成は司法書士が多いですが、税理士や弁護士も契約書をお願いできます。
ただそうなると、沖縄で家族信託の相談では、「後見人制度」との違いに戸惑う家族も多いです。
【 沖縄の終活☆家族信託と後見人制度の違い 】
(1) 家族信託 … 家族信託はあくまでも財産の管理や処分を委任されます。そのため、身上監護(保護)は家族信託の管轄外です。
(2) 後見人制度 … 後見人制度は認知症などにより判断能力に不安が生じた時、本人に代わり財産管理の他、身上監護(保護)まで請け負うことができます。
※ ただし家族信託では財産管理だけではなく処分まで受託者が判断できるのに対して、後見人制度では財産の処分まではできません。
もしも後見人が財産の処分をしたい場合、家庭裁判所に持ち込んで許可をもらう必要があります。
一方、沖縄で選ばれる家族信託はあくまでも財産管理や処分を担いますから、例えば委託者が介護施設に入る場面などで、その契約はできません。(身上監護が管轄外のため)
沖縄で注目される家族信託のメリット
このように高齢になると難しくなりがちな不動産を含めた財産管理の一切を、信頼できる家族に委任できる方法が家族信託です。
家族信託の目的を果たしているならば、受託者が財産管理ばかりではなく処分の判断まで、一切の権限を持つ点が大きなメリットですが、この他にも下記のようなメリットがあります。
【 沖縄の終活☆家族信託のメリット 】
● 不動産財産であれば名義変更を行い、受託者が財産管理や処分の一切を判断できる点以外では、下記などがメリットです。
(1)倒産隔離
… 委託者/受託者、どちらかが破産をした場合でも、片方の財産には影響しない。
(2)第三者への公示
… 信託登記により、第三者へ家族信託の契約を行った事実を公表できる。
(3)家庭裁判所等への申請が必要ない
… 家族信託は弁護士や司法書士、税理士の書類作成により契約が交わされます。委託者/受託者間で細かな契約内容を交わすことが可能です。
(4)二次相続/三次相続まで想定できる
… 委託者にとっては生前の終活により、二世代/三世代まで相続指定ができるため、遺言書以上の効力になり得ることもあります。
(5)財産管理者と受益者の隔離
… 財産を管理する人と、財産から発生する利益を受ける人(賃貸マンションなど)を、選ぶ受託者によって分けることも可能です。
…などなどが沖縄で選ばれる家族信託でできる事柄です。
親としては子どもや孫までの相続指定ができる点がメリットとして大きい一方、子どもとしては親の死を前提とした「相続税対策」を口にすることなく、「資産運用」などの相談で相続対策を進めることができます。
沖縄で注目される家族信託のデメリット
このように、沖縄で選ばれる家族信託にはさまざまなメリットがありますが、やはりデメリットもあるでしょう。
前述した介護施設への入居など、身上監護(保護)ができない点も成年後見制度と比較すると大きなデメリットになり得ます。
【 沖縄の終活☆家族信託のデメリット 】
● 身上監護(保護)が管轄外である他、沖縄で選ばれる家族信託にも、下記のようなデメリットがあるでしょう。
(1)財産管理の責任が生じる
… 受託者は権利を受ける一方、財産管理の責任が生じます。例えば不動産財産であれば名義変更となり、固定資産税やメンテナンスまで、担わなければなりません。
(2)お金の動きが見えない
… 受託者が一切を管理するため、例えば長男が受託者になった場合、次男や三男にはお金の動きが見えないように思えるでしょう。このことが兄弟間でトラブルになる事例もあります。
(3)他の所得との相殺は不可
… 例えば複数の不動産財産を信託していた場合など、片方に赤字が出ても他の財産で相殺ができません。
(4)委託者は報酬がない
… 家族信託により委託者は、書類の提出や財産管理の責任などが生じますが、報酬をもらうと信託業法に抵触します。(家族信託は非営利目的です。)
(5)家族信託は相続税対策ではない
… 家族信託により子どもが財産管理や分割など「相続対策」はできますが、「相続税対策」はできません。相続発生時には同じく相続税が課税されます。
(6)遺留分減殺請求の可能性
… 家族信託契約時に委託者(被相続人)が希望する遺産分割に基づいて財産が分割された時、それが遺留分よりも少ない相続人が遺留分侵害請求を行った場合には、これを防止するほどの権限はありません。
などなどがデメリットです。この他、たとえば田んぼなどの不動産財産は家族信託契約ができない場合もあるでしょう。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で注目される家族信託について、その概要とメリット・メリットデメリットについてお伝えしました。
子どもが委託者となった場合、家族信託はあくまでも親の財産管理や処分にのみ権限があり、身上監護(保護)の権限がありません。また遺留分に関してはまだまだグレー部分もあるでしょう。
そのため沖縄の終活では、家族信託とともに任意後見人制度や遺言書を一緒に進める家族が多いです。
また家族信託は受託者が一人になるため、兄弟間トラブルを避けるためにも、契約前に家族間で細かな部分まで話し合い、オープンにして進めると良いでしょう。
※おひとりさまの財産対策については別記事「【沖縄の終活】おひとりさまの相続対策☆遺贈が増える理由とは」でお伝えします。
まとめ
家族信託のメリットデメリット
●家族信託とは
・家族と契約する財産管理の信託●家族信託のメリット
・財産管理から処分まで権限
・倒産隔離
・第三者への公示
・家庭裁判所等への申請が不要
・二次相続/三次相続まで指定
・財産管理者と受益者の隔離●家族信託のデメリット
・身上監護(保護)の権限がない
・財産管理の責任が生じる
・お金の動きが見えない
・他の所得との相殺は不可
・委託者は報酬がない
・家族信託は相続税対策ではない●デメリット対策
・遺言書
・任意後見人制度