沖縄で築年数の古い実家を相続した場合、残すとしても維持管理費も掛かりますし、売却するにしても仲介手数料やハウスクリーニング費用など、何かと経済的負担が気に掛かりますよね。
さらに売却時には譲渡取得税も掛かるため、築年数が古く空き家になった沖縄の実家を相続するのであれば、できれば預貯金財産など、すぐに現金になる遺産を相続したいと考えるのは当然とも言えます。
そのためか沖縄に限らず実家を相続して放置された空き家が増え(空き家問題)、2016年からは築年数の古い空き家売却に対して、子どもが相続した家でも「3,000万円までの特別控除」が適用されるようになりました。
ただし、この特別控除が適用されるには「相続後3年以内」の売却が要件です。では具体的にどれくらい得をするのでしょうか?
そこで今回は、沖縄で実家を相続して売却した場合、特別控除が適用する場合と適用しない場合との具体例を挙げながら、その計算方法をお伝えします。
【沖縄の実家相続】
特別控除が適用するとどれくらいお得?
沖縄の実家相続で注目される特別控除
全国的にも深刻化する空き家問題ですが、沖縄でも実家の相続により空き家になった不動産は数多くあります。
特に沖縄の場合、子どもが本州へ居住地を移すことにより、定期的な維持管理が厳しくなり、草木が生えたままで放置され、近隣住民から苦情が来る事例も増えました。
沖縄で実家を相続して維持管理が厳しいならば売却をすれば良いのですが、売却活動にパワーが必要なばかりではなく、仲介手数料や税金(譲渡取得税や印紙税など)、その時々によって測量費や解体費用など、経済的負担も懸念され避けられる傾向にあります。
そこで空き家問題解消のため、相続人の早い売却を促すために改正された税制が「3,000万円までの特別控除」です。
【 沖縄の実家相続☆特別控除の税制改正 】
● もともと特別控除制度はありましたが、相続人が配偶者(妻/夫)に限られていました。妻や夫が家を相続した場合、そのまま住み続ける選択が多いでしょう。
→ そこで2016年の税制改正により、子どもが相続した場合にも適用されるようになりました。
ただ国としても空き家解消が税制改正の目的ですから、旧耐震性基準の時代に建てられた建築物であること(昭和56年5月31日以前)、分譲マンションなど区分所有不動産ではないこと、売却額が1億円以下の不動産、などなど、他にも要件が細かくにあります。
※ 要件については別記事「【沖縄の実家相続】特例の3年間は、要件と数え方に注意!」に詳しいです。
まず3,000万円の特別控除が適用するか要件を確認し、適用される場合はどれくらい差があるのかチェックした上で、遺産分割などで配慮してみてはいかがでしょうか。
※ 特別控除による兄弟間の遺産分割変化については別記事「【沖縄の実家相続】3000万円の特別控除で遺産分割は変化する?」でお伝えしています。
不動産売却時、取得額の計算方法
…では、沖縄で実家を相続して4,000万円で売却した場合の計算方法をお伝えします。まずは3,000万円の特別控除がない場合の計算です。
【 沖縄の実家相続☆特別控除なしの場合 】
(1)売却額→4,000万円
(2)取得費→(1)売却額×5%=200万円
(3)仲介手数料→((1)売却額×3%)+消費税10%として→132万円
(4)特別控除→0万円
(5)譲渡所得
→(1)売却額4,000万円-(2)取得費200万円-(3)仲介手数料132万円-(4)特別控除0万円=3,668万円
(6)譲渡所得税→(5)譲渡所得3,668万円×20.315%=746万円
(7)総取得額
→(1)売却額4,000万円-(6)譲渡所得税746万円-(3)仲介手数料200万円=3,054万円
今回はその他の費用(解体費や測量費など)は掛かっていないとして算出し、相続税に対する加算も考慮せず、シンプルに出しています。
特別控除が適用された場合の計算方法
3,000万円の特別控除は「譲渡所得税」に反映しますが、具体的にはどれくらい得をするのでしょうか。前項に倣い4,000万円で売却し特別控除が適用した場合の取得額を算出します。
【 沖縄の実家相続☆特別控除なしの場合 】
(1)売却額→4,000万円
(2)取得費→(1)売却額×5%=200万円
(3)仲介手数料→((1)売却額×3%)+消費税10%として→132万円
(4)特別控除→3,000万円
(5)譲渡所得
→(1)売却額4,000万円-(2)取得費200万円-(3)仲介手数料132万円-(4)特別控除3,000万円=668万円
(6)譲渡所得税→(5)譲渡所得668万円×20.315%=136万円
(7)総取得額
→(1)売却額4,000万円-(6)譲渡所得税136万円-(3)仲介手数料200万円=3,664万円
● 特別控除適用の取得額3,664万円-特別控除なしの取得額3,054万円=610万円
…と計算できますので、3,000万円の特別控除が適用されると譲渡所得税に反映し、610万円のお得です。
相続税の取得費加算とはどちらを選ぶ?
沖縄で実家を相続した場合に特別控除が適用されるであろうケースでは、特別控除の他にも「取得加算」が適用される可能性がありますが、これらは選択適用(特例の重複が認められない)なので、どちらがお得かを冷静に判断しなければなりません。
相続税を「費用」として計算できるため、取得費として加算する税制ですが、「どちらを選べばよいのだろう?」との相談も少なくありません。
【 沖縄の実家相続☆取得費加算 】
● ただ取得費加算の場合、全ての相続税に対して算出されます。
→相続税額×譲渡財産の課税価格÷(相続税課税価格+債務控除額)の計算です。
※ 取得費加算が特別控除の3,000万円以上の適用になる事例はごく稀ですので、特別控除を選択した方が得をする事例が多いでしょう。
相続財産が大きい場合は税理士に相談をして比較検討もできます。ただ数千万円の相続であれば、3,000万円の特別控除を選択した方が得になるケースが多いです。
3,000万円の特別控除によりどれだけ得をするかを予め算出できることで、兄弟間の遺産分割でも不公平感がなくなりトラブルが解消されるなど、役立つ場面は多くあります。
遺産分割協議ではそれぞれが譲歩しないまま、問題を先延ばしする形で沖縄の実家の所有権を折半で相続する事例も多くあるでしょう。
ただこの場合にも所有権がそれぞれに対等にあるため、「いつ売却をするか」「いくらで売却をするか」などの意見の食い違いにより、時期をおいてあらためてトラブルの種になる可能性は否めません。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄で実家を相続した場合、3,000万円の特別控除が適用されることで、どれくらい得をするのか…、4,000万円で沖縄で相続した実家を売却した事例を上げて、具体的な計算方法をお伝えしました。
ただ、この3,000万円の特別控除が適用される不動産は築年数が35年以上(旧耐震基準法が適用された昭和56年5月31日以前の建築物)など、要件は多々あります。
そのため、もしも特別控除を見越した遺産分割協議を進めるのであれば、まずは適用するかをよくよく確認してください。
また沖縄で築年数の古い実家を相続する場合、純粋な売却額ばかりではなく、売却までには解体費やリフォーム費用など、さまざまなコストが掛かっている可能性もあり、精神面の負担も否めません。
この経済的、精神的負担も考慮しながら兄弟間で遺産分割ができれば、トラブルもより少なくなるでしょう。
まとめ
特別控除の計算方法
(1)売却額
(2)取得費→(1)売却額×5%
(3)仲介手数料→((1)売却額×3%)+消費税10%
(4)特別控除→3,000万円
(5)譲渡所得→(1)売却額-(2)取得費-(3)仲介手数料-(4)特別控除
(6)譲渡所得税→(5)譲渡所得668万円×20.315%
(7)取得額→(1)売却額-(6)譲渡所得税-(3)仲介手数料