【沖縄の実家相続】3000万円の特別控除で遺産分割は変化する?
2022/1/5
「【沖縄の実家相続】空き家の売却なら3年以内がお得な理由」や「【沖縄の実家相続】特例の3年間は、要件と数え方に注意!」では、築年数の古い沖縄の実家を相続した際、3,000万円まで特別控除を受ける可能性をお伝えしました。
現金で受け取る預貯金財産と沖縄の実家と相続財産があった場合、沖縄の実家相続は負の遺産として避けられる傾向があります。そのため特別控除が適用されなかった今までは、固定資産税や維持費など考慮した上で財産も配分される事例が多くありました。
では3,000万円の特別控除が適用されることで、遺産分割の傾向が変わる可能性はあるのでしょうか。今回は、沖縄の実家相続で特別控除の適用によって、遺産分割はどのように変わる可能性があるのか…、についてお伝えします。
【沖縄の実家相続】
3000万円の特別控除で遺産分割は変化する?
不動産相続に掛かる費用と遺産分割
3,000万円までの特別控除が適用されるにしてもしないにしても、軍用地などとは違うため、沖縄で実家を相続するよりは、現金で受け取る預貯金を相続したい!と考える人は多いでしょう。
「【沖縄にある実家の相続】空き家相続に掛かるお金とは」で詳しくお伝えしていますが、沖縄の実家を相続することで固定資産税や維持・管理費が掛かりますし、売却するとしてもコストもパワーも掛かります。
【 沖縄の実家を相続し、売却した場合に掛かるコスト 】
● 沖縄で相続した実家を維持/管理する
(1)固定資産税(空き家の場合割高になる)
(2)維持/管理費(本州など遠方にいる場合、定期的な掃除には交通費も必要)
● 沖縄で相続した実家を売却する
(3)仲介手数料
→ 多くは不動産へ売却の宣伝や仲介を依頼するため手数料が掛かります。沖縄で相続した実家が400万円以上になれば、その目安は「(売却価格×3%)+消費税10%」です。
(4)(更地にする場合)解体費用
→ 築年数の古い沖縄の実家を相続した場合、スムーズな売却や固定資産税対策のために更地にするケースが多くあります。費用目安としては下記です。
・木造住宅→3~5万円/坪
・RC造住宅→6~8万円/坪
・鉄骨造住宅(アパートなど)→4~6万円/坪
※ 立地条件などにより重機が入らなかったり、構造上解体しにくい…、などのイレギュラーな事柄が起きた場合は、目安以上に費用が掛かる可能性もあります。
(5)各種税金
→ 不動産売却により下記のような税金が掛かります。(売却金額によってそれぞれ税金額も違うため、今回は項目のみ記載していますが、ご了承ください。)
・印紙税
・登録免許税
・住民税
・復興特別税
・譲渡取得税
※ この「譲渡所得税」に対して、沖縄で相続した実家が条件を満たした築年数の古い空き家であれば、3,000万円の特別控除が適用される仕組みです。
…この他にもその時々で測量費用やハウスクリーニング費用など、沖縄で相続した実家を無事売却できるまでに掛かる可能性はありますが、何よりも預貯金など現金ではなく不動産を相続すると、精神的な負担も大きい傾向があります。
「住まない家」は日常生活の他に維持管理の気掛かりがありますし、売却活動にはパワーも必要です。
【 沖縄で実家を相続した場合に多い遺産分割 】
● さらに経済的負担が預貯金による現金財産を受け取った人よりも掛かるとなると、不公平感を感じてトラブルにもなり兼ねません。
→ そのため、沖縄で相続した実家は維持・管理や売却時に掛かるであろう費用を多めに分割する事例が多いです。
ですから、今までは3,000万円までの特別控除がないとして費用を算出してきましたが、今後は沖縄で相続した実家が特別控除に適用する場合、特別控除を想定した遺産分割の可能性があります。
特別控除が適用される以前の事例
では3,000万円の特別控除の改正が施行される以前の事例、沖縄の実家相続を含む遺産分割の事例です。
築年数の古い空き家となる沖縄で相続した実家の価値が4,000万円、それ以外では預貯金口座に4,000万円が残っていた事例をお伝えします。
【 沖縄で実家を相続☆特別控除適用前の事例 】
● 一律「折半」として遺産分割をすると、それぞれ4,000万円ずつです。
・長男が沖縄の実家を相続(価値4,000万円)
・次男が預貯金財産4,000万円
● けれども古い空き家を長男が相続するとして、維持管理や売却に掛かる費用を考慮して、下記のように分割する事例が多くありました。
・長男→沖縄の実家(価値4,000万円)+800万円の預貯金財産を相続
・次男→預貯金財産3,200万円を相続
…それでも沖縄の相続した実家に住まない限り、日ごろから気に掛かったり、周辺住民からの苦情が来たら処理をしなければなりませんし、売却活動のパワーを鑑みると、なかなか率先して相続する人は少ないかもしれません。
ただ3,000万円までの特別控除によって、経済面での負担が軽減するため、少なくとも以前よりは遺産分割でトラブルは起きにくくなる可能性があります。
特別控除が適用されてからの事例
沖縄で実家を相続した場合、不動産価値は固定資産評価額によるものなので、時価(実際に売却できる販売額)との差はあるかもしれません。
この時価との違いにより、積極的に沖縄の実家を相続するか否かは分かれますが、一般的な築年数の古い空き家であれば、3,000万円までの特別控除が適用しても、維持管理費や売却に掛かる費用を考慮した遺産分割が多い傾向です。
● 沖縄で相続した実家を4,000万円で売却した場合、3,000万円の特別控除が適用されると、税制改正前と比較してどれくらい得をするでしょうか。
<税制改正前(適用なし)>
(1)売却額 4,000万円
(2)取得費 200万円
(3)仲介手数料 132万円
(4)特別控除 0円
(5)譲渡所得 3,668万円
(6)譲渡所得税/住民税 746万円
(7)取得額 3,054万円
<税制改正後(適用あり)>
(1)売却額 4,000万円
(2)取得費 200万円
(3)仲介手数料 132万円
(4)特別控除 3,000円
(5)譲渡所得 668万円
(6)譲渡所得税/住民税 136万円
(7)取得額 3,664万円
※ <税制改正前(適用あり)>3,664万円から<税制改正前(適用なし)>3,054万円を引くと、610万円の得をした計算です。
ですから沖縄で相続した実家が、この特別控除に適用する場合、この差額を見越した遺産分割の可能性が高くなります。
計算の仕方など、詳しくは別記事「【沖縄の実家相続】特別控除が適用するとどれくらいお得?」でお伝えしていますので、コチラをご参照ください。
【 沖縄で実家を相続☆特別控除適用後の事例 】
● 前項でお伝えした価値4,000万円の古い空き家(3,000万円の特別控除が適用)と、預貯金4,000万円の遺産分割の事例でお伝えすると…、
・長男→沖縄の実家(価値4,000万円/3,000万円の特別控除適用)+200万円の預貯金財産を相続
・次男→預貯金財産3,800万円を相続
…などの事例がありました。このように3,000万円分の譲渡所得税が差し引かれることまで考慮した遺産分割へと変化する可能性が高いでしょう。
いかがでしたでしょうか、今回は沖縄の古い実家を相続した場合、特別控除の税制改正により、兄弟間の遺産分割がどのように変化するか…、具体例を挙げてお伝えしました。
ただ本州に住む子どもが沖縄の実家を相続する場合、維持管理や売却の打ち合わせなどによる交通費や、解体費用や測量費など、前項でお伝えしたような雑費が掛かる可能性が高いです。
さらにコスト面での負担ばかりではなく、住んでいない空き家に日々配慮しなければならない、精神的な負担も大きい傾向にあります。
そのため、沖縄では古い実家を相続してくれたとして、少し上乗せする事例も多いです。例えば、長男が4,000万円の不動産+400万円の預貯金財産/次男が3,600万円の預貯金財産などと分割する事例です。
まとめ
特別控除により変化した遺産分割の事例
●完全に折半した遺産分割事例・長男→ 価値4,000万円の不動産
・次男→ 預貯金4,000万円●維持管理/売却費を考慮した遺産分割事例の比較
<特別控除適用なし>
・長男→価値4,000万円の不動産+800万円の預貯金
・次男→預貯金3,200万円<特別控除適用あり>
・長男→価値4,000万円の不動産+200万円の預貯金
・次男→預貯金3,800万円※特別控除適用により610万円の違いがあった